2006 Fiscal Year Annual Research Report
不凍蛋白質分子の界面吸着が氷結晶成長カイネティクスに及ぼす効果の分子レベル研究
Project/Area Number |
05F05309
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
古川 義純 北海道大学, 低温科学研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ZEPEDA Salvador 北海道大学, 低温科学研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 結晶成長 / 氷結晶 / 不凍糖タンパク質 / 界面吸着 / 蛍光 / 界面カイネティクス |
Research Abstract |
不凍糖タンパク質(Antifreeze Glycoprotein, AFGP)の凍結抑制機能のメカニズムを解明するために、AFGP水溶液中で氷結晶の自由成長実験を行った。AFGP分子には、蛍光分子であるFITCによりラベルを付けてある。結晶の成長過程は、共焦点蛍光顕微鏡でその場観察した。その結果、以下のことが明らかになった。 1)AFGP濃度が、μg/mlのレベルでも、氷の結晶成長に伴うAFGP分子の分布状態の変化が十分に観察可能であることがわかった。これは、干渉計などの従来の方法よりも桁違いに高精度で測定が可能であることを意味している。 2)ピラミッド面に関して、界面にAFGP分子の吸着が起こっていると成長が抑制され、成長が継続中には界面吸着がないことが、初めて直接的に証明された。 3)界面へのAFGPの吸着量を見積もると、吸着した分子と分子の間隔がおよそ90±10Åであることがわかった。この吸着分子が、結晶面の成長をピン止めしているとすると、吸着分子の間の面は曲率を持って盛り上がる。このため、界面の温度がギブストムソン効果で低下したとすると、界面の温度は約0.2℃と推定される。この温度は、結晶成長実験の初期化冷却度として与えた温度にほぼ等しい。すなわち、この結果は、界面に吸着したAFGP分子によるピン止め効果モデルが有効であることを示唆する。 4)ピラミッド面へのAFGP分子の吸着過程の観察の結果、界面に沿った吸着分子の拡散が吸着量の変化に大きく寄与することが明らかになった。 5)一方、界面へのAFGPの吸着で成長が抑制されている面に、新しい成長界面が現れると、吸着していたAFGPは結晶内に取り込まれること無く、界面から離れて水溶液側に拡散することが観察された。すなわち、界面へのAFGPの吸着は、従来考えられている強固な結合と言うよりも、可逆性の強い吸着であることが示された。
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Research Products
(1 results)