Research Abstract |
拘束飛行におけるスズメガの羽ばたきと飛翔筋活動を解析するための実験システムを構築した.実験システムは,風洞,光学計測システム,筋電位計測,同期装置の4つから構成されるが,特に中核をなす光学計測システムについて,実際のスズメガの拘束飛行計測を行い,光学機器の選定および解析アルゴリズムの開発を行った.使用する高速度カメラは,解像度,フレーム速度,シャッタ速度,信号ノイズ比等の観点から,フォトロン社のFastcam-1024PCI(最大解像度1024 x 1024 pixels,撮影速度1000fps)を選定した.櫛状の構造光を投射するためのレーザプロジェクタは,高出力かつ高密度(33本)のラインを出力できる機種を採用した.一方,従来行われてきたトンボの計測と同様の機器の配置でスズメガの羽ばたきを計測したところ,羽ばたき振幅が大きく,羽ばたき全周期にわたって構造光を照射することが困難であることが分かった.そこで,構造光の向きと高速度カメラの位置など光学機器の再配置を行い,これを改善した.さらに,これら光学システムの変更に対応した解析アルゴリズムを検討し,翅形状に対する最適な曲面当てはめ法を新規に開発し,十分な精度を得るに至った.これまでに,この改良した光学計測システムと4チャンネルの飛翔筋電位計測(左右の背縦走筋,第三翅底骨筋)を同期させ,拘束飛行中のスズメガから多くのデータを取得することに成功した.今後,開発したアルゴリズムを用いて,羽ばたきの翅形状変化の解析を進め,基本的な羽ばたき運動における翅の動態と飛翔筋活動の関係を解析するとともに,計算アルゴリズムの改良による計測精度の向上,さらに,これまで手動で行われてきた画像処理の自動化についてもプログラムの開発を進め,次年度以降予定している自由飛行実験に向けた実験系の構築を行う.
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