2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05F05387
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
増原 宏 大阪大学, 大学院工学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
USMAN Anwar 大阪大学, 大学院工学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 光応答性蛋白質 / クロモファー分子 / 光異性化反応 / 吸収スペクトル / 蛍光スペクトル / 結晶光反応 |
Research Abstract |
視覚や走光性細菌の光応答初期過程において蛋白質中クロモファー分子の光誘起異性化反応の重要性はよく知られており、溶液中の光反応挙動は詳細に研究されてきた。本研究では、光応答性タンパクであるPYPのモデル化合物の一つであるPCT(p-hydroxycinnamate-thiophenyl ester)の結晶状態での光反応の研究を行った。PCT分子の単結晶がフォトクロミック反応を示し、さらに溶液やタンパク中では短寿命(ピコ秒からナノ秒)の光異性体が結晶中では数時間以上安定であること見出した。特に本年度は、単結晶のX線構造解析、顕微蛍光分光による光反応ダイナミクスの温度効果、粉末試料の紫外可視吸収分光や赤外分光による光異性体の構造解析等の実験から、光異性化反応の機構を詳細に検討した。紫外光照射によるトランス体からシス体への異性化反応が、分子間での水素(あるいはプロトン)移動の後に起こることがわかった。さらに、この異性化反応と競争して[2+2]の光二量体反応が起こること、さらに光二量体反応にともなう結晶格子の局所的な構造乱れが、結晶中においてPCT分子がトランス体からシス体へ異性化するために重要な働きをしていることが示唆された。生成したシス体は可視光照射あるいは熱的に元のトランス体へ戻ることを確認した。これらの結果は、また新しい固相フォトクロクロミック反応として有機固体化学の分野においても興味深いものである。また、PYPの光応答初期過程であるタンパク質中でのクロモファー分子の光異性化反応の機構解明において基礎的な知見を与えるものである。これらの研究の一部は速報として学術誌にて発表し、さらにこれまでの溶液やタンパク質中の研究との比較検討も含めた解説を執筆した。
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Research Products
(2 results)