2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05F05388
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
谷本 能文 広島大学, 大学院理学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MORGUNOV Roman Borisovich 広島大学, 大学院理学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 磁場効果 / 無機結晶 / 磁性 |
Research Abstract |
本研究の目的は、結晶中の常磁性ドーパントの凝集過程などに対する磁場効果を、OTから最大15Tの範囲で多角的に検討し、そこで観測された磁場効果の機構を解明することにある。超伝導磁石等を用いて種々の実験を行い、下記の成果を得た。 1.NaCl結晶中のEu^<2+>クラスターの拡散律速による凝集の初期過程がスピン依存過程であり、5-15Tの磁場にセンシティブに依存することが分かった。ダイマー(Eu^<2+>とホールからなるダイポールの対)など種々の会合数のダイポールのクラスターがあり、それらは熱により凝集する。磁場を印加することにより凝集初期過程に変化が起こり、その結果最終凝集生成物に影響を及ぼすことが解明された。 2.ダイマーに属するEu^<2+>イオンが再構成するのは、熱的励起状態にあるダイマーのスピン状態が磁場により変化するためである。高スピン状態のEu^<2+>ダイマーから低スピン状態への変化が、交換相互作用による結合エネルギーを変化させ、ダイマーの初期原子配置を不安定化するのが原因である。 3.3つの方法によりNaCl:Eu結晶中に磁場にセンシティブなクラスターを作ることができる。(a)ダイポールのゆっくりとした熱励起凝集、(b)大きな凝集体の粉砕、(c)ディスローケーションコアにあるダイポールの速い凝集。すなわち、種々の磁気プラスチック効果はダイマーのスピン変換という同じ理由が原因である。磁気センシティブなダイマー生成の微視的メカニズムにより、磁気プラスチック効果を観察するための実験的条件は異なる。 4.NaCl:Eu結晶のEu^<2+>からの蛍光の励起スペクトルに磁場効果(15T)が認められた。ダイマーの凝集によりその吸収スペクトルが変化するのは、磁場はその凝集過程に影響を及ぼしたものである。 以上のように、固体中の常磁性ドーパントの凝集過程に対する磁場効果のメカニズムを解明することができた。
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Research Products
(6 results)