2007 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ型トリパノソーマのジヒドロオロト酸脱水素酵素を標的にした新規薬剤の開発
Project/Area Number |
05F05494
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北 潔 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
INAOKA D.K. 東京大学, 大学院・医学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 寄生虫 / エネルギー代謝 / 核酸代謝 / 結晶構造 / 反応機構 / ジヒドロオロト酸脱水素酵素 / フマル酸還元酵素 / オロト酸誘導体 |
Research Abstract |
TcDHODは寄生虫であるトリパノソーマクルージのエネルギー代謝経路と核酸代謝経路に関わる"keyEnzyme"であり、その酵素反応はジヒドロオロト酸を酸化してオロト酸を生成する第一反応、(ジヒドロオロト酸脱水素酵素)とその還元力を用いてフマル酸からコハク酸を生成する第二反応(フマル酸還元酵素)から構成されているが、その反応機構に関しては最終的結論は得られていない。私たちは基質および生成物との複合体の結晶解析から反応機構を明らかにするため、京都工芸繊維大学・原田教授との共同研究によりTcDHODが生理的に用いる基質および生成物との共結晶の作成を試みた。 結晶化は拮抗阻害剤であるオキソン酸存在下で作成し、その結晶をソーキング法によりジヒドロオロト酸フマル酸コハク酸との複合体結晶、さらにネイティブ体を得ることに成功した。その結果、ジヒドロオロト酸とフマル酸が同じポケットに結合することからTcDHODの第一反応と第二反応の反応機構は同じ部位で行われる"one-siteping-pongBi-Bi"であることの直接的な証拠が得られ、分子レベルで反応機構の解析が可能となった。その結果今まで提唱されていた反応機構と異なり、新たな反応機構を提案することが出来た。 さらに得られたTcDHODの結晶構造とヒトDHODの結晶構造を比較し、活性部位において寄生虫とヒトの間で異なる4残基のアミノ酸の位置が明らかとなった。その違いからピリミジンリングの5位の周辺にヒトDHODでは存在しない空間が明らかとなった。その空間を満たす化合物を探索し、5-F-オロト酸がオロト酸と同レベルの阻害強度を示すことを見出し共結晶も作成した。複合体構造では予測どおり5-F-オロト酸がトリパノソーマ特異的の空間を満たしていた。更にその空間の広さと柔軟性を調べるために5-ハロゲン誘導体(5-Cl,5-Brと5-1)を合成したところ、全ての誘導体がオロト酸と同レベルあるいはより低濃度で阻害した。現在5一ハロゲン誘導体とTcDHODの複合体構造を得て解析を進めており、誘導体と思われる電子密度が確認できている。得られた構造の情報に基づき、ドッキング解析による分子設計からより特異的な阻害強度が高い化合物の設計が期待される。
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