Research Abstract |
本研究では、リスク評価のためのモデル開発と事例研究の2つを実施する。 リスク評価のためのモデル開発として,暴露解析モデルの開発を行った.暴露解析モデルは,3次元多媒体モデルとして構築することと,ケーススタディへの適用である.このため,H17年度前半においては,産総研で構築したAIST-SHANEL(産総研水系暴露解析モデル)、AIST-ADMER(産総研大気系暴露解析モデル)の使用を通じて,モデルのコンセプトの理解,入出力構造の理解,ツールとしての使い方を習得した. 暴露解析の事例としては,中国の広州地域を対象にした広域水系暴露解析モデルを構築し,必要となるデータを収集整理するとともに実際に適用し,成果の一部をH18年度において,欧州で開催されるEcohydrodynamicsの会合の論文を作成し受理された.この研究では,中国広州を流れる河川を対象に産業用洗浄剤の環境運命の解析を行い,流出特性,高暴露水域の把握を通じて,モデルの適用性を議論した.今後は,不足するデータの補完手法等を導入し,モデルシミュレーションにおける管理可能な信頼性の領域を明らかにすることを予定している.(Nawahda A. & A.Tokai : Integration of Ecoinformatics and Hydroinformatics in Spatial and Temporal Hydrological Modelling(STHM)" to be appeared in International Multidisciplinary Conference on Hydrology and Ecology, The Groundwater/Ecology Connection Karlovy Vary, Carlsbad, Czech Republic,11-14 September 2006) さらに,物質を換え,適用対象地域をかえて,本モデルの適用性の検討を行った.難燃助剤として使われ,一部の河川水濃度が懸念されている,アンチモンをとりあげた.国内の事業所から公共用水域へ排出されている河川を取り上げて,暴露解析を行った.地球化学的なメカニズムを取り入れ,自然水中の共存有機物濃度,溶存酸素濃度をとりいれたモデルを構築した.希釈と沈殿の確率的変動特性を明らかにするモンテカルロ解析を実施した. なお,リスク評価分野の基礎的な学習およびスキルの獲得のため,アンチモンの環境動態に関する知見の収集と整理,諸外国でなされたアンチモンのリスク評価事例の取り纏めをおこない,暴露解析を実施するに際して必要な要素の抽出を行った.本研究センターの姿勢である,分野横断横糸研究を着実に進めることができた.
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