2005 Fiscal Year Annual Research Report
糖鎖-蛋白質の特異的相互作用を利用した、毒素検知センサー開発のための基盤研究
Project/Area Number |
05F05633
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
鵜沢 浩隆 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオニクス研究センター, チーム長
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SARKAR Sujit Kumar 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオニクス研究センター, 外国人特別研究員
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Keywords | センサー / 糖鎖合成 / シアル酸 |
Research Abstract |
近年、我が国では、病院や福祉施設、保養所などで、院内感染、大腸菌O-157による食中毒、レジオネラ菌による感染などが相次いで報告され、大きな社会問題となっている。これらは、病原性細菌やそれらの生産する毒素が原因である。本研究では、国内で大きな社会問題となっているMRSA(メシチリン耐性黄色ブドウ球菌)による院内感染や食中毒の感染原因である黄色ブドウ球菌の生産するα-トキシン(耐熱性毒素)をターゲットに選び、該毒素を選択的に検知するセンサー開発のための基盤研究を行った。 本年度は、黄色ブドウ球菌の生産するα-トキシンと特異的に結合可能で、センサーに利用できる糖鎖構造(5糖;Neu5Acα2-3Galβ1-4GlcNAcβ1-3Galβ1-4Glc)において、認識に重要な非還元末端側のシアル酸を含有する3糖の合成(下線部位)を試みた。センサー表面に当該糖鎖を固定化するために、還元末端側にはアジド基を有するリンカースペーサーを導入した。市販のN-アセチルグルコサミン(GlcNAcと略する)塩酸塩を出発原料に用い、適切に保護・脱保護を繰り返し、2位にフタロイル基を、6位にブチルジフェニル基を導入したGlcNAc誘導体を合成した。また、ガラクトースより1-thiophenyl 2,3-di-O-benzoyl-4,6-benzylidene-β-D-galactopyranosideを合成し、先のGlcNAc誘導体とβ1,4カップリングさせて2糖誘導体へと変換した。その後、N-フタロイル基およびベンゾイル基の除去、完全アセチル化、0-アセチル基の除去の工程を経て、2',3'、3位がフリーの2糖に対して、ガラクトースの3'位に選択的にシアル酸を導入した。その結果、非還元末端にシアル酸残基を有する完全保護体3糖を合成することができた。現在、最終の脱保護について検討している。又、類似の方法によって、ガラクトースの6位にシアル酸を導入した3糖についても検討中である。 今後は、脱保護した3糖化合物や新たに合成を試みる5糖誘導体をセンサー基板に固定化して、糖鎖と蛋白質との相互作用を考察する。
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