2006 Fiscal Year Annual Research Report
残留性有機汚染物質(POPs)の高精度分析に基づく日韓農業環境における実態比較
Project/Area Number |
05F05677
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
殷 煕洙 独立行政法人農業環境技術研究所, 有機化学物質研究領域, 主任研究員
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KIM Y.-S 独立行政法人農業環境技術研究所, 有機化学物質研究領域, 外国人特別研究員
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Keywords | 残留性有機汚染化学物質 / 有機塩素系農薬 / ダイオキシン / 堆積物 / 高分解能分析 |
Research Abstract |
有明海では近年、環境悪化問題について社会的関心が高まっている。本海は日本の体表的な半閉鎖系の海域であり、国内最大の干潟を有する。有明海を囲む4県(福岡、熊本、佐賀及び長崎)は古くから代表的な米作地帯であり多くの農薬などが使用されてきた。有明海は多くの流入河川を抱え、陸域からの影響を受けやすく、浮泥という懸濁物の濃度が高いことから海底に残留性有機汚染化学物質が蓄積しやすい環境である。 本研究では有明海から採取しだ表層堆積物と柱状堆積物から有機塩素系農薬類(OCPs)、ダイオキシン類(PCDD/DFs)及びPCBsについて高分解GC/MSを用いて分析し、詳細な同族体組成分析による過去50年間にわたる有明海の化学物質に関する汚染分布を考察した。その結果、OCPs濃度の順位は層によって違いはあるがおおよそヘキサクロロベンゼン(HCB)>ヘキサクロシクロヘキサン類>DDTs類>ドリン類であり、過去に工業製品で使用されたHCBが数ppbレベルで残留し、東京湾と比べてHCBが高い濃度で残留していることが分かった。 PCDDs及びPCDFsの鉛直濃度分布では、1930年代に濃度が上昇し始め、1950年代はじめから急激に増加して1968-1971年層でピークを示した後、90年代までには減少し表層に向かって再度高くなる傾向であった。PCDD/DFsの同族体組成分布でもPCPの不純物であるOCDDの組成が最も高く残留していることと、有明海における1960年代にPCPの大量使用にともなう急激な残留濃度増加からPCP由来の汚染であると考えられる。Co-PCBsの鉛直分布は表層で最も高い濃度を示した。有明海の潮の流れは反時計方向であり、試料採取時点から約5km南方向の大牟田川周辺から高濃度のPCBsとダイオキシン(平成12年福岡県調査)が検出されたことは矢部川周辺まで影響されたと考えられる。
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Research Products
(5 results)