2005 Fiscal Year Annual Research Report
残留性有機汚染物質(POPs)の高精度分析に基づく日韓農業環境における実態比較
Project/Area Number |
05F05677
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
殷 煕洙 独立行政法人農業環境技術研究所, 環境化学分析センター, 主任研究官
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金 倫碩 独立行政法人農業環境技術研究所, 環境化学分析センター, 外国人特別研究員
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Keywords | 残留性有機汚染物質(POPs) / 堆積物 / HRGC-HRMS / ダイオキシン類 / 有明海 |
Research Abstract |
近年、残留性有機汚染物質(POPs)や内分泌攪乱物質などによる野生生物への影響が報告されるようになってきたが、従来の分析感度が十分ではないため、環境濃度を測定しても検出限界値以下を示すことが多く正確なPOPsの動態把握が困難である。そこで、POPsの高感度な分析法(高分解能GC-MSを用いた分析法)を用いて、近年、漁獲高の減少が懸念されている有明海における水質、水底の底質及び柱状堆積物の分析を行い、現在までの環境変動を考察することとし、まず、有明海のPOPs残留実態を把握した。 2005年に柳川沿岸で採取した柱状堆積物(全長3mの上部50cm)を2cmずつ切り取り、表層から5cm間隔で深さ50cmまでの堆積物(N=11)及び水底の底質(3ヶ所)を分析に供した。試料は風乾後、2mmふるいにかけて褐色瓶に保存した。試料30gをアセトンで16時間以上ソックスレー抽出を行い、抽出液は純水とヘキサンで分配して水溶性分夾雑物を除去した後フロリジルカラムで精製した。測定は13Cを用いた内部標準法で高分解能GC-MS(Micromass社製AutospecULTIMA、カラム:ENV-8MSの30cm、分解能:10000以上)による多成分高感度分析法を適用して定量した。 河口域(3ヶ所)の水底の底質のPOPs濃度の最高値と最低値の幅は大きく、約3倍の差を示すところもあった。なお、柱状堆積物の分析結果、深さ20cmより濃度が大きく上昇し、15cmでピークを示した後、5cmまで低下し表層部分はさらに高くなる年代変動を示した。POPs濃度の順位は層によって違いはあるがおおよそヘキサクロロベンゼン(HCB)>ヘキサクロシクロヘキサン類>DDTs類>ドリン類であり、過去に工業製品で使用されたHCBが数ppbレベルで残量し、東京湾(清水、2005)と比べてHCBが高い濃度で残留していることが分かった。なお、日本では農薬として登録がないマイレックスの場合、pptレベルで検出された。おおよそ大気循環等による長距離移動したものが残留していると考えられた。ダイオキシン類及びPCB類分析から得られた知見についても考察した。
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