Research Abstract |
沖縄県国頭村(琉球大学農学部附属亜熱帯フィールド科学教育研究センター与那フィールド)で採取した土壌試料から,本邦未記載で,世界的に発見例の極めて少ないMononchida目線虫,Actus salvadoricusを見出した。本種や,その他の調査で見出した本邦産Mononchida目線虫Mononchus,Mylonchulus,Clarkus各属(種まで同定)の18SrDNAなどの塩基配列を読み取った。これにデータベースに登録されているGranonchulus属などのMononchida目線虫の塩基配列を併せ系統解析を行った。その結果,各属はそれぞれのクレードにまとまり,Actus属はMylonchulus属の近くに位置するものの独自の地位を占めるものと考えられた。同属は,口腔の小歯の配列が独特であるなど,形態的にも独自性が高いので,独立した属とすべきであると考えられた。以上の結果は,論文に取りまとめ投稿した。Mylonchulus属内各種の系統関係についても,18SrDNAなどの塩基配列による系統解析を行い,その結果を投稿し,掲載を待っているところである。また,ネットワーク上に公開された,飽和食塩水をべースにDMSOおよびEDTAを加えた処方の保存液(以下塩漬固定液,塩漬固定液を用いる保存・固定法を塩漬法という)を土壌から分離した線虫に加え,その形態を観察また,保存後DNA抽出が可能かどうかを調査した結果,線虫のステージにより,例えばPristionchus属線虫の耐久態幼虫のように,体が収縮してしまうケースも認めたが,通常は形態・DNAとも保存され,塩漬法が形態観察においても,これまでのホルマリンを含む固定液に変る固定・保存方法であることを確認した。したがって,塩漬法により,DNAを用いた土壌線虫の同定と形態的同定を両立させ,研究の効率化を図ることができると考えられた。
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