2005 Fiscal Year Annual Research Report
色素体転写装置の解明と操作による,植物のストレス耐性および生産性の向上
Project/Area Number |
05F05722
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 寛 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BHATIA P. 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | シロイヌナズナ / 葉緑体分化 / 転写制御 / RNA polymerase / DNA microarray / 重金属ストレス / シグマ因子 |
Research Abstract |
高等植物葉緑体RNAポリメラーゼPEPは葉緑体ゲノムにコードされるが、プロモーター配列の認識に必要なシグマ因子群のみは核にコードされる。シロイヌナズナには6種の葉緑体シグマ因子が存在し、分化や環境ストレスなどに応じた葉緑体遺伝子の発現調節に関わっている。本研究では、シロイヌナズナにおけるシグマ因子群の役割の解明を目指して以下の解析を行った。 (1)シロイヌナズナの6種のシグマ因子のうち、SIG3の機能に関しては未だ不明な部分が多い。そこでまず、SIG3遺伝子へのT-DNAの挿入変異株の選抜を行った。この株では、野生株に対して若干の発芽遅延が観察されたが、通常条件下では顕著な表現型は認められず、さらなる検討が必要である。次に、葉緑体転写への影響を調べるためにDNAマイクロアレイ解析を行ったところ、一部の光合成遺伝子の発現が減少していた一方で、一群のNEPに依存する遺伝子の発現量は上昇していた。現在、これらの検証とSIG3相補株、および過剰発現株を用いた解析のための準備を並行して進めている。 (2)土壌中における重金属イオンの蓄積は植物の生育に大きく影響し、環境問題であると同時に農業上の問題となっている。植物は細胞中の重金属イオン濃度を調節するための機構を備えているが、詳細はあまり明らかにされていない。そこで本研究では、重金属イオンに対する応答・耐性機構の中で葉緑体の果たす役割の一端を明らかにするため、重金属ストレスに応答した葉緑体転写制御に関わるシグマ因子の探索を行った。重金属イオンの1種であるNiを含む培地上では、その濃度上昇に依存した生育阻害が観察された。Ni濃度を影響の著しい50ppmに設定し、各シグマ因子の発現量を調べたところ、特にSIG5、およびSIG6の発現が未処理のものに対して顕著に誘導されることが分かった。現在、マイクロアレイ解析により個々の葉緑体遺伝子発現の変化を詳細に調べている。
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