2006 Fiscal Year Annual Research Report
村上春樹の文学テクストにおけるジェンダーの問題:現代日本文化における日常性の分析を中心に
Project/Area Number |
05F05728
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
エリス 俊子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
OTOMO RIO 東京大学, 大学院総合文化研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 日本文学 / ジェンダー / 日常性 / 村上春樹 / 三島由紀夫 / 金原ひとみ / オーストラリア |
Research Abstract |
1.東京オリンピックに関する論文発表:村上春樹が書いたシドニーオリンピック(2000年)レポートと三島由紀夫が書いた東京オリンピック(1964年)レポートを分析し、それぞれの作家の「身体」に対するアプローチの違いに時代性を読んだ。オリンピックという空間はカーニバル的でありつつ、個人の身体が国体と対面する場でもある。この論文によって村上の脱ジェンダー志向が1960年代との比較としては明らかになった。 2.金原ひとみに関する論文発表:村上春樹の作品が1995年を境にある種の方向転換を見せたことは多々の批評家が指摘するところである。近年、この1995年以降に十代を過ごした非常に若い作家たちが次々と出現しており、そのひとり、金原ひとみのテクストに焦点をおきながら、女性、文体、近代的主体の行方を追った。この論文を通して、その後クイーンズランド大学(豪州)の青山ともこ氏の編集になる「少女を読む少女」という本のプロジェクトに参加することとなった。 3.現在は村上作品に戻って、脱ジェンダーが実は女性性を隠蔽することになっているのではないかという問いを追っている。それと共に、日常的な空間と非日常的な空間がいかに作品の中で表象されているかを分析している。日常性という問題を考えるとき、近代とポスト近代におけるその表象の仕方の異なり方がみえてくればよいとこの時点では考えているが、さらに村上以降の作家によってかかれる日常的な空間、マンガ・ライトノベルなどの語りに現れる日常にも目を向けていくことで、現代日本文化の読み方を探りたい。 4.さらに、オーストラリアの日本文学者有志で起こす予定のウェブ・ジャーナルの編集員として、日本の大学院生の論文参加を呼びかけ、英文でペーパーを書くことについてのセミナーを開くことなども計画している
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