2006 Fiscal Year Annual Research Report
沿岸域における蛍光性溶存有機物の発生源および変質過程に関する研究
Project/Area Number |
05F05733
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
佐久川 弘 広島大学, 大学院生物圏科学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LEEBEN Aina 広島大学, 大学院生物圏科学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 蛍光性溶存有機物 / 広島湾 / フルボ酸 / フミン物質 / タンパク質様物質 |
Research Abstract |
1)広島湾における蛍光性溶存有機物(FDOM)の物質収支や循環過程の解明 前年度において、広島湾においては、強風などの撹乱作用により堆積物から底層海水に有機物の再溶解が起こっていること、再溶解する有機物の主体は陸起源腐植物質などの蛍光性有機物であることを明らかにした。今年度は、溶出された有機物の量や運命に関して野外観測及び室内実験により詳細に解明した。その結果、たとえ撹乱作用が短時間のものであっても、再溶解により底質海水に移行する有機物量は、河川から一日当たり流入する有機物量に匹敵するほどの量であること、また再溶解する有機物は、3次元蛍光マトリックス分析から判断する限り、底質海水中に含まれる有機物の化学組成ではなく、河川水のそれに近いことがわかった。したがって、これらの結果から、広島湾堆積物から海水中に移行する有機物量は、広島湾海水中の有機物収支を考える上で無視できない量であること、さらに堆積物中の有機物の直接の起源は、河川から流入した陸起源有機物であることが推定された。 2)広島湾海水におけるFDOMの変質および分解機構の解明 広島湾においては、河川からの流入および堆積物からの再溶解が、有機物の供給過程として重要である。これらの過程を通して広島湾海水に供給された有機物は、物理化学的、生物学的過程により、分解、消滅、変質すると考えられる。本研究では、細菌による生物学的過程を調べるために、汽水と海水の混合比を変化させた試料に、海洋細菌及び河川細菌を移植し、FDOMや組成の変化から、有機物の変質や分解過程を捉えるごとにした。その結果、100%汽水および100%海水試料では、それぞれ河川および海洋細菌による増加率が大きいのに対し、中間の混合比では両者による増加率が拮抗していた。故に、広島湾海水では、海洋細菌と河川細菌はそれぞれ異なった役割を持ちながら、有機物の変質および分解過程に関与することが示唆された。
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Research Products
(1 results)