2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05F05742
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 修 東京大学, 大学院薬学系研究科, 教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LUCARINI Simone 東京大学, 大学院薬学系研究科, 外国人特別研究員
|
Keywords | 触媒的不斉合成反応 / キラルニオブ触媒 / アジリジン / 光学活性ジアミン / エナンチオ選択的 |
Research Abstract |
触媒的不斉合成反応は、光学活性化合物を得る上で、最も有用な方法論の一つである。その触媒の多くは金属を活性中心として持っているため、あまり用いられていない金属を用いることや新たな不斉配位子を開発し適用することは、既存の不斉反応の改良や新たな不斉反応の開発の可能性を生み出すという点で非常に重要な研究テーマであり、このような概念をもとに筆者らはニオブを活性中心とするキラル触媒の開発を行った。ここで、アジリジンは窒素原子を含む歪んだ三員環構造を有し、窒素求核剤を用いて反応させると1,2-ジアミンが生成する。光学活性ジアミンは、生理活性物質や天然物、さらに不斉配位子の合成前駆体としても非常に重要な化合物群である。このような背景を元に筆者はキラルニオブ触媒を用いるアジリジンの不斉開環反応の研究を行った。アジリジンの窒素上の保護基の検討を行ったところ、電子吸引性基を有する活性化アジリジンでは反応性は鈍く不斉誘起はほとんど起こらないことを見出した。また、生成物阻害が起こるために脂肪族置換基は有効ではなく、アジリジンの保護基は芳香環である必要があった。また、触媒調製についても非選択的経路で反応が進行することを見出し、これを抑制する方法論を見出した。このような知見を元に筆者は反応の基質一般性を検討し、中程度から良好なエナンチオ選択性をもって目的の化合物が得られることを明らかとし、さらに生成物の多くは簡単な再結晶操作によって光学純度を容易に高められることを確認した。以上、筆者はキラルニオブ触媒を用いて、これまでにあまり報告が成されていないアジリジンのアニリンによる開環反応について検討を行い、光学活性な1,2-ジアミンを効果的に得る方法を見出した。この化合物群は天然物などに広く見られ、選択的に片方の芳香族を脱保護することで光学活性な非対称ジアミンなどへと変換することができる。
|