2005 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンザルの未成熟個体の採食行動習得と社会関係構築に関する生態学的研究
Project/Area Number |
05F05748
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山極 寿一 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
TARNAUD Laurent Daniel 京都大学, 大学院・理学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | ニホンザル / 幼児 / 採食技術 / 生態 / 社会関係 / 学習 |
Research Abstract |
本研究は、ニホンザルの未成熟個体が成長過程でどのように自然の食物を認知し、それを採食する技術を誰からどのように習得するかをフィールドワークによる直接観察と食物の栄養分析によって調査することを目的としている。本年度はまず京都市の嵐山で分担者がニホンザルの調査法を習得して予備観察を行った後、屋久島に研究代表者と分担者を派遣し、自然状態で遊動しているニホンザルの2集団で採食行動を観察した。母親と子どものペア10組を選び、個体追跡法によって採食品目、採食時間、採食方法などを記録した。その結果、離乳したニホンザルの子どもは、まず母親の行動を見て食物を選択するが、しだいに母親とは違う食物を口にするようになることが明らかになった。これは、秋から冬にかけて食物が柔らかい果実から固い葉や種子に移行するためであり、幼児が母親よりも同世代の幼児の採食行動により興味を示して食物を選ぶためである。これまで、類人猿と異なり、ニホンザルには観察学習による新しい技術の獲得は不可能と考えられてきたが、本研究の結果はニホンザルの幼児が母親ではなく同年齢や少し年上の子どもから採食技術を観察学習によって習得していることを示唆している。現在、幼児や母親が採食した食物を現地で収集し、栄養分析を行いつつある。おそらく、母親の好む食物と幼児が好む食物とでは栄養や形状が異なりていると考えられる。今後さらに観察事例を増やし、栄養分析を完成させて比較検討していけば、ニホンザルの幼児の採食技術の習得過程とその必要性を明らかにできると考えている。
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Research Products
(2 results)