2006 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンザルの未成熟個体の採食行動習得と社会関係構築に関する生態学的研究
Project/Area Number |
05F05748
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山極 寿一 京都大学, 大学院理学研究科, 教授
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
TARNAUD Laurent Daniel 京都大学, 大学院理学研究科, 外国人特別研究員
|
Keywords | ニホンザル / 幼児 / 離乳期 / 観察学習 / 果実 / 昆虫 / 採食戦略 |
Research Abstract |
本研究は、ニホンザルの未成熟個体が成長過程でどのように自然の食物を認知し、それを採食する技術を誰からどのように習得するかをフィールドワークによる直接観察と食物の栄養分析によって調査することを目的としている。昨年度の屋久島における自然群の観察によって、離乳したニホンザルの子どもが母親や年上の子どもの採食行動を観察学習していることが示唆された。そこで本年度はその習得過程をさらに詳細に調べるために、昨年度と同じ2群の野生ニホンザル群で母親と子どものペア10組を選び、個体追跡法によって採食品目、採食時間、採食方法などを記録した。その結果、離乳したばかりの子どもは母親以外の子どもの採食行動を熱心にのぞき込み、観察直後にその行動を繰り返すことが明らかになった。一方、1歳を過ぎた子どもは母親の採食行動だけを近接して観察する。この違いが生じる原因として、1)離乳直後の子どもはまだ母親の食べる固い繊維質の食物はうまく消化できず、年齢の近い年上の子どもが食べている消化しやすい食物を習得する必要がある、2)1歳を過ぎると母親以外の年長個体から採食中の近接を許容されなくなる、といったことが考えられる。最もよく観察学習されるのは果実と昆虫であり、離乳直後に冬を迎える屋久島ではこれらの採食技術を習得することが子どもの生存条件を上げていると推測することができる。今後は、観察学習された食物の栄養分析を通じて、離乳期の子どもの栄養条件や採食戦略に学習が果たす役割を明らかにしていく所存である。
|
Research Products
(3 results)