2005 Fiscal Year Annual Research Report
デング熱ウイルスの進化と疫学動態,特に抗原依存エンハンスメントの効果について
Project/Area Number |
05F05758
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐々木 顕 九州大学, 理学研究院, 助教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BEN J.Adams 九州大学, 理学研究院, 外国人特別研究員
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Keywords | デング熱 / 抗原サブタイプ / 流行パターン / 交差免疫 / 複数年周期 / 非同期振動 / 非線形共鳴 / 疫学動態 |
Research Abstract |
デング熱は全世界の熱帯および亜熱帯地域で猛威をふるう昆虫媒介のウイルス性伝染病で,複数回感染するとデング出血熱(DHS)という致死率の高い症状に移行するという特徴を持つ.デングウイルスは4つの大きく異なる抗原サブタイプに分かれ,近年の人類集団の人口増加と移動性の上昇により,異なる抗原型が同一の地域で流行するようになった.これが宿主の複数回感染を可能にし,抗原依存的エンハンスメント(ADE)と呼ばれる特異な免疫応答現象(過去の感染によって出来た抗体が,2度目の感染で宿主に害をもたらす)によって,デング出血熱が起こる.本課題では,複数の抗原サブタイプと交差免疫,抗原依存的エンハンスメント、感染率の季節変動を考慮した疫学動態数理モデルの構築し解析した。各サブタイプは、季節変動性に対する疫学動態の非線形共鳴によって、パラメータに応じて2年〜数年おきに大流行する複数年周期の変動を示すことが示された。このとき異なるサブタイプのが同期して振動する状態と、それぞれのサブタイプがの流行年のずれる非同期振動の状態があり、また初期値によって異なる振動状態に収束する双安定性も見られる。非同期振動は、サブタイプ間の交差免疫が弱いときに見られることや、非同期振動のアトラクターの方がパラメータに敏感に依存することなど、流行パターンを支配する原理を数値シミュレーションと安定性解析によって、明らかにした。
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