2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05F05796
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 修 東京大学, 大学院薬学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BERTHIOL Florian 東京大学, 大学院薬学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | エンカルバメート / アルキリデンマロネート / マイケル反応 / 触媒 / 不斉 / 銅 |
Research Abstract |
エナミド、エンカルバメートは、求電子剤として多く用いられている基質であるが、求核剤としてはその反応性の低さのためほとんど有機合成に用いられている例がない。当研究室では、アルデヒドやケトン、アゾジカルボキシレートへのエンカルバメートの触媒的不斉付加反応について既に報告している。しかしながら、α、β不飽和カルボニル化合物に対する付加反応はこれまで例がない。本反応が実現できれば、効率的にδ-アミノ酸を立体選択的に合成することができるため、合成的価値は高い。 種々検討の結果、2価の銅塩と1,2-ジフェニルエチレンジアミンを骨格として有するキラルジアミンを混合して調製される錯体を触媒として用いることで、アルキリデンマロネートとエナミド、エンカルバメートとの反応が収率、選択性良く進行することを見いだした。用いるアルキリデンマロネートとしては、フェノールエステルを有するアルキリデンマロネートを用いると特に、選択性が向上した。また、エナミドとエンカルバメートの両者をそれぞれ用いたところ、エンカルバメートに比べてエナミドを用いた場合の方が、より高い選択性を得ることができた。反応終了後得られるアシルイミン体は酸性条件下ケトンへ体へと導き、単離精製後、収率、選択性を決定した。用いることのできるエナミドとしては、芳香族ケトン由来のエナミドだけでなく、脂肪族ケトン由来のエナミドも用いることが可能であるため、汎用性の高い反応と言える。本反応で得られたケトン体はその後、メチルエステルへのエステル交換、脱炭酸、還元を経ることで文献既知化合物へと変換可能であり、HPLCの保持時間の比較により主生成物の絶対立体配置も決定することができた。 以上の様に筆者は、エナミド、エンカルバメート類の、α、β不飽和カルボニル化合物に対する触媒的不斉付加反応を達成した。今後、天然物や医薬品合成への応用が期待される。
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