2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05F05813
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
仲田 均 慶應義塾大学, 理工学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MERLET Glenn 慶應義塾大学, 理工学部, 外国人特別研究員
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Keywords | トピカル作用素 / 中心極限定理 / ランダム行列 |
Research Abstract |
ランダムな離散事象の記述において、それがランダム行列およびその積により表現されることがしばしばある。本研究では通常の行列の積の代わりにmax-plus代数による積を用いることにより記述される現象の数学的理論の解明を目的としている。これは、和の代わりに最大値、積の代わりに和を用いて行列の積を定義する代数系である。独立同分布を持つ行列値確率変数列に対してmax-plus代数による積として得られる行列の確率論的挙動は通常のランダム行列と異なる。この概念を一般化したものは、トピカル作用素とよばれている。本研究では、一般にランダムなトピカル作用素から作られる確率過程に、memory loss propertyと呼ばれる性質を仮定し大数の法則の証明を行った。ついで、同じ仮定の下で中心極限定理の成立も証明した。さらに、仮定を弱め少し一般的な条件の下でも中心極限定理が成立することを証明した。証明はエルゴード理論において通常のエルゴード定理が使えない場合にしばしば有効な方法を提供する劣加法的エルゴード定理を用いる。それに確率論で中心極限定理の証明にしばしば用いられるマルチンゲールの方法を活用し、従来示すことのできなかった結果の証明に成功した。これにより、この分野では従来得られている結果よりも一段進んだ結果を得ることが可能になった。この成果はオペレーションズリサーチ(計画数学)における確率論的手法の研究などに応用を持つと思われる。これは、本研究の今後の課題として考えている。なお、本研究の成果は2編の論文にまとめられ現在投稿中である。
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