Research Abstract |
「里山問題」は,日本の生物多様性問題の最重要課題のひとつであるとともに,資源の持続的利用のモデルでもある.しかし,里山地域(中山間地と大きく重なる)は,過疎化,高齢化問題をかかえており,その活性化は急務であるが,解決困難である.本課題では,能登半島の里山生態系において,里山の現況と地域住民によるその利用を調査し,持続的利用にむけた提言を目指している.以下はその主要結果である. 1.能登半島の輪島市,珠洲市,穴水町,能登町をたびたび訪問し,金沢大学里山駐村研究員をはじめとする地域住民から,山菜,海藻等の利用,里山への問題意識について,過去と現在の状況を聞き取りを実施した.聞き取りには,テープレコーダーを併用し,日本人通訳が同行し,研究室に帰ってから,ノートを整理した. 2.珠洲市三崎町小泊地区,輪島市町野町金蔵地区,輪島市門前地区,輪島市名舟地区において,アンケート用紙を配布し,住民による里山利用の変遷,里山に対する意識を調査した.アンケート項目には,年齢,性別,学歴,現在の職業,過去及び現在の里山利用の内容と頻度,里山問題への意識,里山問題を解決するための要望事項,意見等を質問した.どの地区においても高齢者が多く,青少年,幼児はほとんどいなかった. 3.里山問題をグローバルな視点から捉えるために,Millennium Ecosystem Assessment(ミレニアム生態系評価)等の国際的取組における「生態系保全」,「資源利用」,「伝統知識」等の概念を用いて問題を整理した. 以上を通して,能登半島における里山利用の変遷,過去及び現在の問題点を明らかにしつつある.
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