2005 Fiscal Year Annual Research Report
動的視覚環境での人間の知覚・行動特性に関するバーチャルリアリティ実験
Project/Area Number |
05J00057
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
寺本 渉 独立行政法人産業技術総合研究所, 人間福祉医工学研究部門, 特別研究員(PD)
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Keywords | バーチャル・リアリティ / 身体感覚 / 時間順序判断 / ヴェクション / サッカード |
Research Abstract |
観察者の身体全体をすっぽりと覆うようなバーチャルリアリティ装置は非常に没入感が高く,動的視覚環境を構築すると,強烈な自己身体全体の移動感覚が惹起される(この際の視覚刺激を視覚性自己運動情報と呼ぶ).この感覚が惹き起されると,実際には観察者は静止しているにもかかわらず,静止時とは全く異なる情報処理が行なわれる.例えば,見かけの自己運動方向や速度に応じた視覚情報処理(時間順序処理や奥行き処理)や運動制御(不随意眼球運動)が行なわれる(寺本ら,2004;Teramoto et al.,2004).本研究では,視覚性自己運動情報が影響を及ぼす感覚モダリティや運動制御段階を特定するための2つの実験を行なった.第一の実験では,視覚性自己運動情報が聴覚情報処理に及ぼす影響を検討した.その結果,見かけの自己運動方向が聴覚的な知覚時間順序決定機構にも影響を及ぼすことが明らかになった.また,観察者を実際に移動させた際にも同様の現象が認められることから,バーチャルリアリティ装置によるアーチファクトではないことも明らかになった.ただし,聴覚情報処理のどの段階が視覚性自己運動情報の影響を受けているかについては,今後検討していく必要がある.第二の実験では,視覚性自己運動情報が随意眼球運動(サッカード)による視覚対象の定位に及ぼす影響を検討した.その結果,本実験で用いたサッカード課題には影響を及ぼさないことがわかった.本実験で用いた課題は,網膜中心座標系または頭部中心座標系を用いて行なわれるサッカードと考えられ,このような感覚座標から運動座標への変換過程に対しては視覚性自己運動情報は影響を及ぼさない可能性が示された.
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