2006 Fiscal Year Annual Research Report
動的視覚環境での人間の知覚・行動特性に関するバーチャルリアリティ実験
Project/Area Number |
05J00057
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
寺本 渉 独立行政法人産業技術総合研究所, 人間福祉医工学研究部門, 特別研究員(PD)
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Keywords | バーチャル・リアリティ / 身体感覚 / 運動知覚 / ヴェクション / 物体認識 / 異種感覚統合 |
Research Abstract |
自己身体の位置や動きに関する情報は,筋骨格系,前庭系,視覚系などの様々な感覚系によって与えられ,我々の知覚や運動制御の基本的枠組みを決定している.例えば,外部対象に対して定位・運動を行う場合には自分は今どちらを向いているのかという情報は必然的に必要になり,自分が動いている場合にはその自己の動きに最適な情報処理が行なわれる.しかし,従来その詳細なメカニズムは明らかにされていない.空間移動時のよりリーズナブルな情報呈示技術やそれに関わる教育・訓練技術の開発のためには,その基礎となる人間の自己運動時の外部空間把握メカニズム解明する必要がある.第一の実験では視覚的自己運動情報が聴覚的物体運動知覚に及ぼす影響を検討した.自己運動時にはその運動に伴って外受容器上の多くの対象が相対的に運動する.しかし,生体は自己の動きによって生じた運動と外部対象自体の動きによって生じた運動を上手く区別している.この現象に関する聴覚的メカニズムを明らかにすべくバーチャルリアリティ装置及び回転椅子を用いて実験を行った.その結果,与えられた自己運動方向と逆方向に運動する聴覚対象を素早く正確に検出することが認められた.これは自己運動方向に依存した聴覚運動検出メカニズムが存在することを意味する.第二の実験では自己運動情報が物体認識に与える影響を検討した.従来物体認識は自己身体運動とは独立な処理過程と考えられ,その相互作用に関してはほとんど研究されていない.しかし,物体の見えは自己運動によつて時々刻々変化するにもかかわらず,我々は容易に当該物体を認識できる.これは自己運動に合わせた補正メカニズムによるものと考えられる.このメカニズムを明らかにすべく実験を行った,その結果,自己運動に合わせた効率のよい物体認識メカニズムを示すデータが得られた.
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