2007 Fiscal Year Annual Research Report
共生微生物によって賦与される昆虫の寄主植物特異性の機構の解明
Project/Area Number |
05J00165
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
土田 努 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, 生物機能工学研究部門, 特別研究員(PD)
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Keywords | 昆虫 / 微生物 / 内部共生 / 寄主植物特異性 |
Research Abstract |
本研究課題では、エンドウヒゲナガアブラムシの特定植物(シロツメクサ)への適応が内部共生細菌Regiellaの感染によって改善されるという現象を対象として、その生理機能を詳細に解明することを目的としている。Regiellaの生理機能としては、1)シロツメクサに不足する栄養素の合成や、2)シロツメクサに存在する有毒化合物の解毒、によって植物適応能を賦与していることが予想されている。前年度までに完全合成人工飼料飼育系を開発し、これらの可能性の両面について解析を行ってきた。 1)Regiellaによる栄養素の合成の検証 昨年度までに、Regiellaは通常状態で宿主が排泄するグルタミンを再利用して、必須アミノ酸の合成・供給を行う能力があることが示唆された。本年度は、同位体表指揮したグルタミンを用いてトレーサー実験を行い、Regiellaにはグルタミンを材料にして必須アミノ酸を合成する機能があることを確認した。 2)Regiellaによる有毒化合物の解毒能の検証 昨年度に引き続き、対象としている現象に関与していることが予想される植物の二次代謝産物(青酸配糖体)についての解析を行った。シロツメクサから抽出、あるいはメーカーから購入した青酸配糖体を人工飼料に添加して、パファーマンスを感染状態で比較することにより、Regiellaの効果を確認した。その結果、人工飼料中の青酸配糖体量が増えるに従って、非感染虫では産仔開始日の遅延や総産仔数の減少といった悪影響の傾向が一層はっきりと観察されたが、Regiella感染虫では悪影響は観察されなかった。このことにより、Regiellaが青酸配糖体を"無毒化"し、宿主への悪影響を緩和している可能性が示唆された。これらの研究成果については、国内の研究集会での講演依頼があり、高い評価を得ることができた。
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Research Products
(3 results)