2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J00173
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Research Institution | National Food Research Institute |
Principal Investigator |
川井 清司 独立行政法人食品総合研究所, 企画調整部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 高圧処理 / 澱粉 / 糊化 / 老化 / ガラス転移 |
Research Abstract |
本研究の目的は、高圧処理による澱粉の糊化や老化、ガラス転移や構造緩和といった状態変化やそれに伴う諸物性の変化について検討し、加熱処理澱粉と比較する事で、高圧加工技術の有用性、特異性を探ることである。研究1年目となる本年度では、まず基礎的知見の集積を目的とし、処理圧力及び澱粉の水分含量が高圧処理澱粉の物性変化に及ぼす影響について検討した。 本研究では馬鈴薯澱粉を試料として用いた。水分含量20〜90%(w/w)に調製した馬鈴薯澱粉を、40℃の圧力媒体中で1時間、0.4〜1.2GPaで高圧処理した。各高圧処理澱粉の糊化エンタルピー変化(ΔH)を示差走査熱量計にて、結晶構造の変化をX線回折によって調べた。水分含量40〜90%の澱粉は、処理圧力及び澱粉の水分含量が高くなるに従い、圧力糊化の進行を意味するΔHの低下、結晶性の低下を意味するX線ピーク強度の低下が顕著となった。1.2GPaまでの圧力処理によって水分含量50〜90%の澱粉が完全に糊化した。また、水分含量40〜60%の澱粉では、老化澱粉の再糊化を意味する約40℃からのブロードな吸熱ピークも認められた。この結果は高圧処理直後から澱粉が老化していたことを示唆する。水分含量が30%の試料には1.2GPaの処理圧力でさえΔHやX線強度の変化は殆ど見られなかった。しかし水分含量が20%にまで低下すると、若干ΔHが低下する傾向が認められた。水分含量20%の澱粉は常温でガラス状態にあることが知られていることから、澱粉のガラス転移が高圧糊化特性に影響を及ぼすことが示唆される。以上の結果を踏まえ、高圧処理によってもたらされる澱粉の様々な物性変化を処理圧力対水分含量の状態図としてまとめた。
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