2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J00173
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
川井 清司 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所食品工学研究領域食品高圧技術ユニット, 特別研究員(PD)
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Keywords | 高圧処理 / 澱粉 / 糊化 / 老化 / ガラス転移 / 馬鈴薯 / アミロペクチン / 熱分析 |
Research Abstract |
本研究の目的は、高圧処理が澱粉の状態変化に及ぼす影響について調べることであった。馬鈴薯澱粉-水混合物(澱粉含量10-80%w/w)を試料とし、様々な条件(400-1200MPa、20-70℃、1-66時間)で高圧処理した。高圧処理澱粉の状態変化は主に示差走査熱量計を用いて調べた。 澱粉含量10-20%試料は、高圧処理温度の上昇と共に糊化度が増加し、糊化圧力(澱粉が完全に圧力糊化するのに要する圧力)が低下した。澱粉含量30-50%試料においても、高圧処理温度の上昇と共に糊化度は上昇したが、いずれの処理温度においても糊化圧力は一定であった。熱による糊化の場合、澱粉含量が30%以上の低水分試料では糊化に要する水分が欠乏するため、部分的な糊化が起こった後、残存するアミロペクチン結晶の融解が高温で起こることが知られている。この結果を踏まえると、高圧処理による糊化は処理温度の上昇と共に進行し易くなるが、アミロペクチン結晶の融解は処理温度に殆ど影響しない、と考えられる。また、澱粉含量20-60%の試料には老化が認められた。処理温度が低いほど、老化が促進されることが明らかとなった。 高圧処理時間が圧力糊化及び老化に及ぼす影響は殆どなかった。しかし、高圧処理時間が長くなると共に糊化開始温度が上昇することが明らかとなった。これは澱粉粒子中のアモルファス相の密度が高圧処理中に高くなり、糊化する際の水分移動が停滞したためと考えられる。 高圧処理が澱粉のガラス転移温度及びガラス転移に伴う熱容量変化に及ぼす影響は顕著ではなかった。ガラス状態にある澱粉の分子運動性は見かけ上凍結しているため、高圧処理に対してもその状態は殆ど変化することはなかったと考えられる。圧力応答の視点から、食品がガラス状態にあると分子運動性が低く、長期安定であるという見解を支持する結果が得られた。
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