Research Abstract |
空間解析を用いて,気温及び大気汚染を曝露要因とした環境疫学研究の事例報告を2件行った.1件は,三宅島火山ガス(SO_2)の急性曝露による呼吸機能影響について,島内定点常時モニタリングデータと,ボランティア活動者の自覚症状報告から分析したものである.その結果,自覚症状リスクと火山ガス濃度の上昇は明らかに有意な関係であり,咳,痰,のどの痛み,息苦しさについては,現状の火山ガス警報・注意報濃度レベルよりも低濃度で訴え率が高くなることが分かった.今後の帰島者の継続的フォローアップにおいて,平均曝露濃度のみならず,ピーク濃度への曝露強度(頻度・濃度など)についても考慮する必要性があることを示した.本報告は,自覚症状を対象としながらも,2000年三宅島噴火後初の疫学調査報告として重要な意義をもつ.2件目は,標準化した時系列分析手法を用いて,欧州3都市(ロンドン・ブダペスト・ミラノ)におけるサブグループ(性別・年齢・社会経済状況・住環境など)間の日別平均気温による主要死因別死亡リスクを比較した.その結果,60歳以上,女性,心臓疾患・呼吸器系疾患のリスクが高く,これらの結果は3都市間で一致した.社会経済状態については,3都市の全サブグループで一致した結果が得られず,関連曝露指標内容,及びその地理的集約単位の更なる検討が必要と示唆された.本報告は,単都市分析の既報告が多い中,複数都市を対象に標準化手法を用いて分析した結果として,従来のエビデンスを強化する位置づけをもつ. また,論文報告準備中のものとして,年平均のPM_<10>,NO_2,SO_2と乳幼児死亡率の地理的関係を小地域統計を用いて調べる長期的分析を行った.さらに,環境疫学研究の中で問題となっているオゾンと気温のInteractionについて,Edinburgh大学との共同で英国全域を対象に,死亡及び罹患率との関係から,その有無について分析した.
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