2005 Fiscal Year Annual Research Report
海産微細藻類感染性RNAウイルスの分子生物学的性状と生態学的機能に関する研究
Project/Area Number |
05J00240
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
水本 祐之 独立行政法人水産総合研究センター, 瀬戸内海区水産研究所・赤潮環境部・赤潮制御研究室, 特別研究員
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Keywords | ウイルス / 赤潮 / 渦鞭毛藻 / 感染 / 複製 / RNA / 宿主特異性 |
Research Abstract |
HcRNAVは赤潮原因渦鞭毛藻ヘテロカプサに感染するRNAウイルスであり、海洋環境中に広く分布する渦鞭毛藻に感染するRNAウイルスとしては世界で初めて分離された種である.本年度の研究により、HcRNAVの全長約4.4kbの一本鎖プラスセンスRNAからなる全塩基配列を決定した.またウイルスゲノムの5'末端と3'末端には、真核生物のほとんどのmRNAが保持するCap構造とpoly(A)配列が存在せず、3'末端には安定なステムループ構造が存在することを明らかにした.以上の成果は論文として発表済みである.(Nagasaki et al.,2005). HcRNAVの種内宿主特異性の異なる2系統からなる。この感染特異性が、ウイルスの感染過程のどの段階で決定されるかを調べるため、ウイルスの複製過程で特異的に合成されるマイナス鎖を特異的に検出するプローブを作製し、ノーザン解析を行った.その結果、接種感染が成立しないウイルス株-宿主株の組み合わせにおいては、マイナス鎖の蓄積が認められなかった.また、HcRNAVゲノムRNAの3'末端側遺伝子にコードされる構造タンパク質はサブゲノムRNAを介して発現する可能性が示唆された. ヘテロカプサの分離株には、上述のいずれのウイルス系統に対しても溶藻反応を示さないものが存在することが示されている.マイナス鎖特異的プローブを用いたノーザン解析の結果、このヘテロカプサ分離株はUA系統のウイルスの複製をサポートしていることが明らかになった.マイナス鎖特異的プローブを用いたノーザン解析は、従来法より感度の高いウイルス感染検出技術であると考えられる.また、この分離株の性状を分子生物学的側面から解析することにより、ウイルス-宿主間の相互作用がさらに詳細に解明されるものと期待される.
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Research Products
(5 results)