2006 Fiscal Year Annual Research Report
海産微細藻類感染性RNAウイルスの分子生物学的性状と生態学的機能に関する研究
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05J00240
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
水本 祐之 独立行政法人水産総合研究センター, 赤潮環境部赤潮制御研究室, 特別研究員(PD)
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Keywords | ウイルス / 赤潮 / 渦鞭毛藻 / 感染 / 複製 / RNA / 宿主特異性 |
Research Abstract |
HcRNAVは赤潮原因渦鞭毛藻ヘテロカプサに感染するRNAウイルスであり、海洋環境中に広く分布する渦鞭毛藻に感染するRNAウイルスとしては世界で初めて分離された種である.HcRNAVの種内宿主特異性の異なる2系統からなる。この宿主特異性がウイルスの感染過程のどの段階で決定されるかを調べるため、ウイルスマイナス鎖RNAを特異的に検出するノーザン解析を行った.その結果、感染が成立しないウイルス株-宿主株の組み合わせにおいては、マイナス鎖の蓄積が認められなかった.また、渦鞭毛藻へのウイルスRNA導入技術を開発しウイルスRNAを直接細胞内に導入したところ、いずれの宿主株においてもウイルスのマイナス鎖RNAの合成が確認された。以上の結果より、HcRNAVの宿主特異性はウイルスと宿主レセプターの特異的結合過程を含む感染過程初期過程にあることを明らかにした(Mizumoto et al.,2007)。 ヘテロカプサの分離株には、上述のいずれのウイルス系統に対しても溶藻反応を示さないものが存在する。マイナス鎖特異的プローブを用いたノーザン解析の結果、このヘテロカプサ分離株はUA系統のウイルスの複製および感染性ウイルス粒子の再生産をサポートしていることが明らかになった。以上の結果からウイルス感染による細胞死が認められない場合でもウイルス粒子生産が起こることを明らかにし、赤潮動態に及ぼすウイルスの影響に新たな知見を与えた(Mizumoto et al.,平成19年度日本水産学会春季大会)。また、実際のヘテロカプサ赤潮現場から約80株のヘテロカプサ株を分離し、ウイルスRNA蓄積量にもとづくウイルス感受性試験を行ったところ、現場環境にはこれまで考えられてきた以上のHcRNAV感受性タイプが存在することを明らかにした(Mizumoto et al.,第54回日本ウイルス学会学術集会)。
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Research Products
(3 results)