2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J00253
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石神 裕之 早稲田大学, 人間科学学術院, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 塵芥処理 / 近世遺跡 / 武家地 / 計量分析 / 遺物組成比 / 大芥溜 / 山の手の地域差 |
Research Abstract |
本年度(平成17年度)は東京都区内における近世遺跡を対象として、従来の都市江戸における塵芥処理研究で等閑視されてきた武家地(特に山の手)を軸に、廃棄量の実際の姿を示す遺物重量のデータベース構築を進めるとともに、今後の研究の見通しをつけるために、新宿区牛込、四谷地域における遺跡を抽出し、基礎的な計量分析を行った。 基礎分析を行った30遺跡においては、1m^2あたりの遺物量は平均して約3kgであるが、坂町遺跡(新宿区坂町1-1)では1m^2あたり約13kgの遺物量が認められるなど、塵芥の集中廃棄地(大芥溜[おおごみため])が、山の手地域(特に四谷地域)において存在し、永代島搬出以外の処理が行われていることが明らかとなった。また各遺跡の遺物総重量について、材質別(「磁器」・「陶器」・「〓器」・「土器」・「瓦類」・「土製品」・「金属製品」・「木製品」・「骨角製品」・「ガラス製品」・「石製品」・「自然遺物」・「土類」)での組成比の検討を行ったところ、瓦類量の比率が他の遺物に比べ地域的特徴を示し、四谷地域では瓦類量が5割を切る遺跡が多いのに対し、牛込地域では瓦類量が5割を超える遺跡が多いことが明らかとなった。 こうした組成比の差異が生じた要因として、塵芥の選別と処分地の広狭が背景にあるものと想定される。遺物の接合関係など考古学的知見を検討すると、遺構間での塵芥の分割や移動といった塵芥の選別の痕跡が確認できる。従って、基本的に山の手では廃棄時に処分容積を大きく占める瓦類は選別し、他の塵芥とは区別して屋敷内の空閑地へ廃棄していたものと想定される。ただし四谷地域では大芥溜といった特定空閑地への処理が行われており、処理地が十分に確保できなかった可能性が考えられる。今後は選別した瓦類の処分方法(四谷二丁目遺跡[四谷2-1-3]での瓦類処理遺構の存在など)についても考慮しつつ、永代島への埋立処理とは異なる山の手の塵芥処理の特徴と地域差を明らかにしていきたい。
|