2006 Fiscal Year Annual Research Report
マムルーク朝前期の政治文化と都市社会:未刊行写本・文書史料の分析を通じて
Project/Area Number |
05J00295
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中町 信孝 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(PD)
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Keywords | アラビア語文献学 / マムルーク朝歴史叙述 / マムルーク朝支配エリート / ウラマー / ワクフ文書 |
Research Abstract |
年代記史料の文献学的研究については、前年度までに入手した、アイニー諸年代記の諸写本の精読を続けた。その成果として、前年度に史学会大会(東京大学)で行った学会発表に基づき、学術論文「アイニーに帰せられた4年代記の成立年代と執筆意図」(『西南アジア研究』)を発表した。これは本研究における基本的課題である、歴史家アイニーの諸作品に関する文献学的考察の大枠を示したものであり、広く学会に共有されるべき基礎研究と位置づけられる。アイニー諸年代記の分析についてはさらに、彼の同時代記述を他の年代記との比較により分析し、その叙述の特色をより具体的に考察した。この考察の成果は来年度以降に公表する予定である。 知識人(ウラマー)層の研究に関しては、上記の文献学的研究の結果入手した歴史家アイニーについての詳細な経歴情報を分析し、「中世アラブにおける歴史叙述行為と社会的実践:アイニーの経歴から」(イスラーム地域研究・研究会)と題する口頭発表を行った。これはアイニーという、歴史叙述行為を通じてマムルーク支配エリート層との良好な関係を取り結び、社会的地位・権力を獲得した一人の知識人についてのケーススタディーであり、本研究の中心的課題である支配エリートと知識人との結びつきを分析したものである。 また、1月にはエジプト・カイロにて11日間滞在し、アラブ連盟写本研究所ほか、諸機関で史料調査を行った。その際、エジプト国立図書館の写本校訂の専門家ナグワ・ムスタファ・カーミル氏より、写本読解に関する専門的知識の提供を受けた。
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Research Products
(1 results)