2008 Fiscal Year Annual Research Report
図像解明を手がかりとした中国摩崖石窟の空間構想-唐宋時代の千手観音像を中心に-
Project/Area Number |
05J00302
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
濱田 瑞美 Waseda University, 文学学術院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中国摩崖石窟 / 図像解明 / 空間構想 / 四川地域 / 千手観音像 / 変相龕 |
Research Abstract |
中国の摩崖石窟がどのような宗教的空間を現出していたかを明らかにするため、四川地域と関係の深い唐宋時代敦煌石窟の実地調査で図像資料を収集し、関連する経軌の解読および図像との照合を行い、論文を執筆した。また四川地域の千手観音龕における図像の解明および仏教儀礼との関係について、海外で研究発表を行った。 敦煌地域の石窟壁画の千手観音変相についての実地調査は、莫高窟13箇窟14図〔第148窟主室東壁門上(盛唐)・第231窟甬道天井(中唐)および前室天井(宋)・第292窟前室西壁北側(五代)・第332窟前室天井(五代)・第335窟前室天井(宋)・第79窟前室南壁(盛唐)・第172窟前室南壁(宋)・第386窟主室東壁門上(中唐)・第45窟前室天井(五代)・第302窟甬道天井(宋)・第329窟前室天井(五代)・第402窟前室西壁門上(五代)・第380窟甬道南壁(宋)〕、西千仏洞1箇窟2図〔第13窟甬道東西壁(五代)〕、楡林窟7箇窟8図〔第36窟主室北壁(五代)・第35窟前室天井(五代)・第38窟前室天井(五代)・第39窟甬道南北壁各一図(回鶻)・第40窟前室天井(五代)・第30窟北壁(晩唐)・第3窟東壁南北両側各1図(西夏)〕に及んだ。各図における眷属像の配置図を作成するとともに、眷属像の種類や表現の相違について関連経軌によって解釈を加え、石窟の千手観音変相図と大悲会との密接な関連を指摘するに至った。また、石窟内の空間構想に関しては、莫高窟北周時代の中心柱窟の構造と図像考察を通して、窟内全体が説法空間に構想されていることを論じ、研究誌に発表した。 そのほか、上記の海外研究発表を契機とし、宗教的な空間形成のコンセプトと図像および儀礼とが密接に関わるという筆者の理論を軸とした共同研究の計画が立ち上がった。
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