2005 Fiscal Year Annual Research Report
スターリン文化におけるショーロホフ-統制された文学の再考-
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05J00305
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
乗松 潤奈 (平松 潤奈) 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 特別研究員(PD)
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Keywords | ジェンダー・セクシュアリティ / 身体表象 / 検閲 / 文学統制 / ソヴィエトの民族政策 / コサック・アイデンティティ / 草稿研究 / スターリン文化 |
Research Abstract |
書評・文学論研究 モスクワのロシア国立図書館とサンクト・ペテルブルクのロシア国民図書館において、ショーロホフ作品(初期短編、『静かなドン』『開かれた処女地』)に対する1920〜40年代の書評記事約120点を収集、早稲田大学、東京大学、北海道大学でも、同様の新聞記事を約20点収集した。またロシアの各図書館で、20〜30年代に出版された文学論の著作・論集を15点ほど収集した。現在、文学テクストの統制/生産の観点からこれらの資料を考察中。 手稿・検閲研究 サンクト・ペテルブルクのロシア文学研究所に保存されている『静かなドン』の手稿を閲覧、『静かなドン』の1920年代〜40年代にかけての雑誌掲載版を、モスクワのロシア国立図書館にて収集。これらのテクストをもとに、草稿研究と検閲の問題を絡めながら今後論文化する予定。 論文・発表・出版 (1)論文「ショーロホフ『静かなドン』におけるジェンダー/セクシュアリティ--根絶される女性の身体について」を執筆、日本ロシア文学会誌に投稿。内戦期からスターリン統治期にかけてのジェンダー・セクシュアリティ・女性問題研究を踏まえ、家父長的コサック社会における女性の地位とその表象の問題を検討した。 (2)共同研究「スラブ・ユーラシアにおける東西文化の対話と対抗のパラダイム」(科学研究費基盤研究A)の冬季研究会(2006年2月18日、於北海道大学スラブ研究センター)で口頭発表。「『静かなドン』におけるコサック--その主体化と解体」というタイトルで、内戦期のコサック自治独立運動と、ソヴィエト政権の民族政策・コサック撲滅政策との関係を追い、『静かなドン』においてそれがどう表象されているかを論じた。論文化予定。 (3)共同研究「ソヴィエト全体主義における文化と政治権力の相克および共生に関する超域・横断的研究」(科学研究費基盤研究C)の研究会(2006年2月24日、於鬼怒川)で発表。(2)で取りあげた問題を、ソ連の統制的な文学制度の問題と関係づけ論じた。 (4)ミハイル・ヤンポリスキー『デーモンと迷宮 ダイアグラム・デフォルメ・ミメーシス』を翻訳出版(共訳、2005、水声社)。 (5)(4)の出版を機に開かれた公開研究会「テクストと身体」(2006年3月9日、於新潟大学)で、「ソ連文化と身体」というタイトルで口頭発表。(4)の著作が提起するテクスト分析の方法論をもとに、ソ連史研究・スターリン文化研究の諸問題(アーカイヴ資料の扱い方、検閲制度と身体表象との関わり等)を考察。論文化予定。
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