2006 Fiscal Year Annual Research Report
昭和戦前期を中心とする文学表現の比較文学・比較文化的資料の綜合的研究
Project/Area Number |
05J00317
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山本 亮介 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 日本近代文学 / 翻訳 / 国際文化交流 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、夏目漱石「こころ」の仏訳を具体例として、昭和戦前期の国際文化交流における文学の位置づけを図った。特に本年度は、現在文化交流の一環として行なわれている文学作品の翻訳出版について調査し、戦前期のそれとの比較検討を試みた。そのなかで、具体例として芥川龍之介の英訳小説集を取り上げ、仏訳「こころ」の出版に現われた国際文化交流の問題との類似点を確認した。以上の内容を付した論文は全国学会誌に投稿し、採用された。 続いて、昭和戦前戦中期に刊行された対外日本文化宣伝グラフ雑誌「NIPPON」を研究対象として取り上げた。まず発行者である写真家・編集者の名取洋之助、および日本工房についての研究を整理したうえで、当該グラフ雑誌の刊行経緯について考察した。そこには、名取洋之助の思想に加え、当時の国際文化交流に関係する諸機関・諸人物の動向が反映されていることが確認できた。また、誌面の文章を分析し、対外的に発信された日本文化の言説類型として整理した。以上を踏まえ、グラフ誌「NIPPON」における日本文学紹介のあり方を検討した。まず、諸論者による日本文学および作家紹介の内容を整理し、先に見た日本文化に関する言説と照合した。また、誌面に翻訳された文学作品(具体的には、菊池寛「若杉裁判長」、横光利一「園」、宮沢賢治「やまなし」、芥川龍之介「舞踏会」、志賀直哉「赤西蠣太」)について取り上げた。個々の分析を通して、日本の同時代文学を翻訳紹介する際に浮かび上がる諸課題、対外的紹介の実践によって生じるさまざまな齟齬、翻訳テキスト上に現われる日本近代文学の問題と可能性、などを確認することができた。なお以上をまとめた論文は現在投稿準備中である。付随して、上記の考察に理論および対象のうえで重なる二本の論考を作成した。
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Research Products
(3 results)