2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J00364
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小林 隆道 早稲田大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 広域行政区画 / 現実と理念 / 地域差と制度 / 情報復元過程 / 文書管理 / 「中央-地方」間の均衡 |
Research Abstract |
2005年6月26日から7月1日に宋朝の北辺国境地帯であった中国河北(正定、雄県、鄭州鎮、覇州)を調査した。鄭州鎮には宋代城壁跡が残存し天然の要害が無い河北方面における当時の辺境防備のあり方を実見した。これを以前に調査した陝西の地形と対比させ、宋代の最重要案件であった辺境防備という側面から地域差を確認。これは現実の地域差と全国一律に制定される制度としての行政区画との関係の問題を考える上で重要である。この知見は早稲田大学宋代史ゼミナール「『俄蔵黒水城文献』宋西北辺境軍政文書裁判案件訳注稿(III)」(『史滴』27、2005)の調査記に活かされている。 また、中国史上に広域行政区画が出現する大きな原因の一つとして挙げている中央と地方の文書管理について火災・戦火による文書消失後の復元過程から考察を進めた。中央の文書を復元する際、北宋中期は各州から文書を直接収集したが、南宋初期には州より広範な区域を管轄する路から文書を収集した。これは監察区として成立した路が北宋後半から南宋にかけて文書管理機能を拡充させ、行政区画として役割を果たせる基盤を得たことを背景とした。従来路の権限は縮小するとされたが、文書管理の側面から言えば権限は増し、中央にかかる文書処理の負担を軽減させた。その結果として、北宋の都であり、かつ当時の文書管理センターであった開封が金軍によって占拠された後も、宋朝ほ完全瓦解することなく路の文書管理機能を利用し南宋としての統治を可能とした。この知見は2005年度宋代史研究会で口頭発表(「宋代文書行政における危機管理」)した。 北京大学図書館、国家図書館で地方史を中心として資料の収集整理を進めた。11月には河南地方(鄭州、開封、許昌)へ赴き石碑の残存状況を中心に調査した。これは金朝統治下における旧北宋領において中央と地方の関係を石碑に記された文書の動きから検討するためである。
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Research Products
(2 results)