2005 Fiscal Year Annual Research Report
日英語のスケール構文に関する意味論的・語用論的研究
Project/Area Number |
05J00370
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
澤田 治 早稲田大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | スケール意味論 / 比較構文 / 認知言語学 / Construction Grammar / 語用論 / 序列の逆転現象 / 文法化 / Construal (捉え方) |
Research Abstract |
本研究の研究成果として主に以下の3点が挙げられる。 (1)「比較構文のスケール的捉え方」 本研究では、概念化主体が複数の事象の相対的関係を言語化する際には、常に中立的な視点でそれらを比較しているわけではなく、しばしば主観的「前提」に立っているという点に注目した。たとえば、「太郎に比べたら次郎は賢い」という文では、太郎も次郎も「それほど賢いわけではない」という前提がある。このような前提を踏まえた上での比較は、日英語のイディオム的比較構文に数多く見られる。「前提を踏まえて比較をすることの語用論的効果とは何か」という点を認知言語学、機能言語学、語用論の観点から明らかにした。 (2)「序列の逆転副詞の意味論的・語用論的メカニズム」 日本語の副詞の中には、たとえば「よっぽど」、「かえって」、「むしろ」のように、もともとのスケール上での序列を逆転させる機能をもつものがある。たとえば、「自炊の方が外食より{かえって、むしろ、よっぽど}高くつく」では、「外食>自炊」という費用のランクが逆転し、「自炊>外食」というランクに逆転している。スケール上での逆転という認知プロセスをもった副詞は、英語には見られないという点で興味深い。本研究では、序列の逆転プロセスは「既存の想定構造を覆し、話し手自身の主観的な序列へと変換する認知過程」であるということを認知言語学、および語用論の観点から明らかにした。 (3)「助数詞のスケール構文への文法化」 本研究では、「NひとつVない」構文の文法化に注目した(例:花子はあいさつひとつしない)。この構文における「つ」は脱助数詞化していると考えられる。本研究では、「つ」が脱助数詞化し、「ひとつ」全体が「さえ」のような単独のスケール詞(scalar particle)に変化したという仮説を立て、構文文法(construction grammar)および文法化(grammaticalization)の観点から説明を試みた。
|
Research Products
(5 results)