2006 Fiscal Year Annual Research Report
『ブヴァールとペキュシェ』草稿研究-動物磁気・神秘思想・哲学の小説的表象
Project/Area Number |
05J00392
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
山崎 敦 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(PD)
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Keywords | フローベール / 草稿研究 / 認識論 / 哲学 / 神秘思想 / 動物磁気 |
Research Abstract |
本研究課題における今年度の研究実績は、以下の二点にまとめられる。 1)前年度に引き続き、動物磁気・神秘思想・哲学の三領域を対象としたフローベールの「読書ノート」、及びそれら読書ノートに対応する『ブヴァールとペキュシェ』第八章の「下書き」、これら二種の草稿の解読作業を進め、PDFファイル形式によって草稿のデータベースを構築した。 まだこの研究成果を公表するに到っていないが、ステファニー・ドール=クルレを研究代表者とする、現在進行中の<『ブヴァールとペキュシェ』資料電子版>計画(LIRE)において、いずれインターネット上で公表される見通しであることを付記しておきたい。 2)上記の「読書ノート」及び「下書き」の草稿解読作業に依拠して、『ブヴァールとペキュシェ』をその執筆プロセスにまで遡って精密に分析し、この作品の新たな読解を試みた。この研究の成果は、日本フランス語フランス文学会2006年度春季大会において、口頭で発表した。 加えて、この口頭発表の内容をさらに発展させるかたちで、同学会研究誌に論文を発表した。この論文において、フローベールの参照した数多くの哲学文献について詳細な書誌を作成した上で、この作家独自の小説技法、すなわち、哲学言説を「読書ノート」という裁断機にかけ断片化し、その断片をモザイクのように自在に組み合わせて、稠密かつ複雑な物語構造をかたちづくるという、きわめて特異なフローベールの小説技法を明らかにした。
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Research Products
(1 results)