2005 Fiscal Year Annual Research Report
光散乱と誘電分光法によるマイクロ波・ミリ波・THz領域の水素結合液体ダイナミクス
Project/Area Number |
05J00415
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
深澤 敏子 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 水素結合液体 / 協同緩和 / 動的複素感受率 / マイクロ波からTHz領域 / 分子ダイナミクス |
Research Abstract |
種々の水素結合液体(水、一価アルコール、二価アルコール)および非水素結合性極性溶媒(アセトニトリル、アセトン、THF)に関し、マイクロ波からTHz領域の広帯域複素誘電スペクトル(一次動的感受率)とラマンスペクトル(二次動的感受率)を、周波数領域で直接比較することで、これまで未解明であった両者の対応関係を明らかにした。非水素結合性極性溶媒に関しては、両スペクトルが緩和型を示す低周波部分は共通して分子の回転拡散を反映している事が分かった。一方、水、一価アルコールの水素結合性液体に関しては、ラマンスペクトルと誘電スペクトルの高周波成分が対応(同じ起源のミクロな分子ダイナミクスを反映)することを初めて示し、水素結合性液体に特徴的な協同緩和過程(τ_1過程)はラマン散乱には実質的に活性ではないと結論付けた。さらに、エチレングリコールなど四重極子を形成する分子の場合は、例外的に、相対強度は小さいながら協同緩和の寄与がラマンスペクトルにも現れる事を示した。 水の誘電スペクトルの協同緩和(デバイ緩和)からの逸脱はサブTHzからTHz領域に現れる。このTHz領域の分光測定に関して、今後、技術開発が急速に進む事が予想されるが、本研究の結果は、マイクロ波、ミリ波領域の高精度で測定されたスペクトルと共に分析する事によって、THz領域に現れる分子回転の緩和現象や分子間振動、束縛回転などの分子ダイナミクスや、これらの微視的な過程と、マイクロ波・ミリ波領域に現れる水素結合ネットワークの協同的再配向ダイナミクス(マクロな揺らぎ)の関連性についての理解が飛躍的に深まる事を示している。また、低振動数領域のラマンスペクトルが反映する分子ダイナミクスの分子的機構の解明へと繋がると予想される。
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Research Products
(1 results)