2006 Fiscal Year Annual Research Report
光散乱と誘電分光法によるマイクロ波・ミリ波・THz領域の水素結合液体ダイナミクス
Project/Area Number |
05J00415
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
深澤 敏子 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 化学物理 / 溶液 / 動的感受率 / 小角散乱 / 分子分光 / 蛋白質間相互作用 / 水素結合液体 / ナノ粒子 |
Research Abstract |
1.分子量が小さく球状に近い分子からなる水素結合液体(水やメタノール)に関し、誘電スペクトル(一次動的感受率)に主要な寄与として現れる協同緩和の寄与を差し引いた高周波成分と、ラマンスペクトル(二次動的感受率)が相似形を示すという昨年度の主要な知見を礎石とし、分子形状が球形から大きく逸脱する場合への拡張と上記の一次・二次動的感受率間の対応関係を普遍的に説明可能な理論的枠組みの構築に取り組んだ。これらの問題は、分子の集団的ダイナミクス(巨視的揺らぎ)と微視的過程の相関の解明へと繋がると強く期待される。 2.ポリオキシエチレン鎖を有する両親媒性高分子(水/C_<12>E_8系等)のミセル水溶液に関し、静的構造と分子ダイナミクス(特に水分子の動的挙動)を密接に対応させる物理化学的検討を行った。水和により運動性が低下し、バルクの性質を示さない水分子数をCavell理論に基づく誘電スペクトルの定量分析によって評価し、濃度に強く依存する水和数と、水和水を含む実効的なミセル体積分率を得た。小角散乱曲線のGIFT法分析の結果との比較から、系の等温圧縮率は、水和水の効果を正しく考慮した実効的ミセル体積分率によって初めて定量的に説明できる事を証明した。ミセル間相互作用を溶媒効果をも正しく取り入れて議論する必要がある事を示す結果となった。 3.球状蛋白質の特徴である不均整形状、疎水・親水領域や電荷の不均一分布から非等方的な相互作用ポテンシャルを示すことが予想される。等方的ポテンシャルを仮定しOZ方程式を解く従来の分析手法に替わる方法として、間接的逆フーリエ変換手法を応用して実験的静的構造因子S(q)から二体相関関数g(r)をポテンシャルモデルフリーに得るSQ-IFT法を導入した。溶液中の蛋白質間空間相関を得る新規分析法の指針を示すと共に、ヒト血清アルブミン溶液の小角散乱データに適用し、蛋白質溶液系への応用の第一段階が成功した。
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