2007 Fiscal Year Annual Research Report
日本帝国における戦時労働力動員の展開過程-徴用制度を中心に
Project/Area Number |
05J00455
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
佐々木 啓 Waseda University, 文学学術院, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 総力戦体制 / 戦時労働力動員 / 国民徴用令 / アジア太平洋戦争 / 徴用援護事業 / 青少年犯罪 / 労働科学 / 労務管理 |
Research Abstract |
本年は、戦時期において急増したとされている青少年工の「不良」化問題の実態とその対策について研究を進め、「戦時期日本の青少年工不良化対策-「自由主義」からの解放と「家庭」の普遍化」という論文にまとめた。戦時期日本における青少年工の「不良」化問題は、銃後の国民の総力を増産に傾注することが至上命題である総力戦体制において、緊急の克服課題であった。先行研究においては、主として「不良」青少年工に対する取締や錬成制度の運用が注目されることが多かったが、本研究においては、フィールドである大阪府に関連する各種官製団体の史料や新聞の地方欄などを利用して、地域や事業場などを組み込んだ多角的な「不良」化対策の実態に迫った。 その結果明らかになったのは、戦時下において不良化した/しうる青少年工に対する規律化の契機は、社会レベルでも多様な形で存在していたということであり、具体的には、(1)「自由主義」からの解放、(2)「家庭」的人間関係の普遍化といった諸契機が、青少年工の不良化を防ぎ、彼らを善導するものとして見込まれ、実践にうつされていたということであった。こうした視点から戦時社会を捉えることで、単に強制力だけでは説明のできない日本における戦時労働力動員の特質、さらには総力戦体制の特質を深く理解することにつながるのではないかと思われる。 なお、この研究に加え、昨年から継続してきた国民徴用援護事業の研究を「戦時期日本における国民徴用援護事業の展開過程-国民統合の一断面」にまとめた。
|
Research Products
(2 results)