2005 Fiscal Year Annual Research Report
現代的言語芸術の発生の諸相とその批評方法の探求--ミシェル・レリスの場合
Project/Area Number |
05J00462
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
谷口 亜沙子 早稲田大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 文学批判 / 方法論 / 詩 / ジャンル / 作品構成 |
Research Abstract |
本年度は、ミシェル・レリスの代表作『ゲームの規則』連作における構成の問題について新たな視点を得ることができた。とりわけ最終巻『微かなる響き』における日付を持った断章がいかなる意義を持っているかについての発見は、今後ミシェル・レリスの著作における構成の問題を考える上で大きく可能性を開くものである。長く続く散文の形式がこの最終巻において断章形式に変化するためもあって、これまでこの巻は散発的で部分的な読解あるいはテマティックな読解ばかりがなされてきた。だが、実際にはこの巻においても先行する三巻におとらず周到で綿密な構成を伺うことができ、構成という視点に依拠しなくては読み解けないテクストも存在している。こうした視点は、レリスの生前最後の作品『波動』『商品イメージ』という基本的には羅列的な構成を持つ作品が隠れたダイナミズムを持っているというもう一つの発見によって裏打ちされるものである。本年度はとりわけ、これまで「日記」への接近の兆候とみなされてきた「日付」を持った断章が実際には死の脅威に印付けられた七つの断章という共通性を持った構成上の鍵としての役割を持っていること、かつ序文と結びのテクストを鋭く照射しながら書物全体を支えている点を具体的に論証した。また、そこからそれ以外の断章すべての配置についての詳細な分析を重ね、さらに大著『ゲームの規則』をめぐる批評態度そのものを考え直そうとしている。これらの研究の成果は「ミシェル・レリスにおける生成する構成--日付の打たれた断章から」と題されて、三月、日本フランス語フランス文学会関東支部大会において発表される。
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