2006 Fiscal Year Annual Research Report
現代的言語芸術の発生の諸相とその批評方法の探求-ミシェル・レリスの場合
Project/Area Number |
05J00462
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
谷口 亜沙子 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員DC1
|
Keywords | 文学批評 / 方法論 / 詩 / ジャンル / 作品構成 |
Research Abstract |
2006年3月18日の仏文学会関東支部での口頭発表を論文にまとめ、「関東支部論集第15号」に採用された。ミシェル・レリスの作品における構成の問題に着自したこの論文は、本年度の主要な研究テーマとなった「ミシェル・レリスによる<偽=ゲームの規則>の発見」という問題につながっていった。レリスの代表作『ゲームの規則』の四部作は、自分の一切を統べるある「黄金律」の発見をめぐって書き継がれた大部の自伝的作品だが、そのような「ゲームの規則=黄金律」は、これまで、結局はレリスが発見できなかったものとみなされてきた。だが、「ゲームの規則」は実は最終巻の最後から少し手前において密かに発見され、レリスはそれを秘儀的な手法によってそっと我々に提示しているのではないか。本年度は詩にこの新しい可能性の検討を徹底的に進めた。5月の全国学会で口頭発表を行い、これを発展させた論文が「フランス語フランス文学研究」第90号に受理された。その際ページ数の関係等で扱いきれなかった問題を展開し、早稲田大学大学院「フランス文学語学研究」に「ミシェル・レリスの<新生>-『フィブリーユ』におけるもうひとつの円環」として発表した。第一巻と第三巻の末尾にすでに第四部の終末を予告するような構成が認められることを指摘し、『ゲームの規則』が単に四冊からなる自伝作品ではなくひとつの自律した「連作」となっている点を浮かび上がらせた。これらの三本の論文を執筆するなかで、この「<偽=ゲームの規則>の発見」という仮説とそこから派生する諸問題はフランスにおいてもぜひ提起されるべきだと考え、前三本の論文をフランス語にまとめ、Cahiers Leiris誌の第1号(ミシェル・レリスについての単独専門誌)に投稿した(8月末)。この論文が受理され、2007年4月末に刊行される。
|
Research Products
(4 results)