2005 Fiscal Year Annual Research Report
メゾ系の非平衡統計力学-揺動定理を中心とした理論的アプローチ
Project/Area Number |
05J00484
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
門内 隆明 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Fluctuation Theorem / メゾスコピック系 / 相対エントロピー生成 / 量子Langevin方程式 / 非平衡定常状態 / ラチェット / Fokker-Planck演算子 / WKB法 |
Research Abstract |
環境系の影響の大きいメゾ系の非平衡現象では外力と熱揺らぎの競合下の正負エントロピー生成のバランスとしてFluctuation Theorem(FT)の成立が特に古典Markovian stochastic系で示されている。実験的にも媒質中のコロイド粒子を掃引する場合に外的に為した仕事を温度で割った量に対しFT成立が2002年に示された。本研究ではこの実験の量子効果まで含めたモデルとして理想ボース気体と線形に相互作用する調和ポテンシャルに補足された粒子の系でポテンシャル位置を時間的に動かす可解モデル(Fordモデル)でデザインした。初期時刻に全系が平衡にあるとしたとき(仕事演算子)/(kT)の観測値分布が量子補正を受けたFTを満たすことは2003年に分かっていて一方で相対モジュラー演算子を用いたFTの導出も(外力が静的なとき)田崎・松井によって示されていた。 (1)本年度は田崎、松井の一般論をFordモデルで時間に依存するポテンシャルの場合に拡張した。相対エントロピーの生成と解釈できる量、(エネルギー変化)/(kT)の確率分布を解析的に導出し(量子揺らぎに起因し)非Gauss分布になることが分かった。(スロベニア夏の学校のproceedingに投稿中)またア)田崎、松井の一般論で相対モジュラー演算子が自由エネルギー変化を計る2回観測を表す超演算子であることが分かり、イ)仕事演算子の1回測定に基づくFTとは演算子の非可換性を除けば同じ結果であることが分かった。特にア)を秋の学会で報告した。quasiclassical Langevin系では古典軌道に量子揺らぎを取り入れて一般の時間に依存するポテンシャルについてFT、Jarzynski等式の成立するシナリオを提示した。(PhysRevE 72 027102) (2)外場を印加した周期ポテンシャル下の粒子(ラチェット系)の非平衡定常状態についての以前FTを導出したが、次の問題として定常状態への緩和過程を大阪市大の中村勝弘教授、杉田歩講師と共同でWKB法を用いて考察し、低温、周期境界条件下での緩和定数の外力、ポテンシャル障壁高さ、温度、粘性などのパラメータ依存性を再現できた。(Physica Dに投稿中 cond-mat/0601431v2)3月末にブリュッセルで開かれる学会で発表予定である。
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Research Products
(2 results)