2006 Fiscal Year Annual Research Report
メゾ系の非平衡統計力学-揺動定理を中心とした理論的アプローチ
Project/Area Number |
05J00484
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
門内 隆明 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 揺らぎと輸送 / 非平衡緩和 / ランジュバン方程式 / クラマース理論 / ランジュバン方程式 |
Research Abstract |
タンパク質結晶化において中間相の存在による結晶化の促進がGaliknらによって実験的に示され、その簡傑なモデルとしてNicolisらにより、反応座標に沿った3連井戸型ポテンシャル中のブラウン運動というモデル化がなされた。しかし、中間状態を表す中央の井戸がある深さに達したとき、緩和定数はFokker-Planck(FP)方程式の数値解によると最大になるが、レート方程式の与える緩和定数はこの領域で数値解と大きくずれる。 (1)本研究では緩和定数をFP演算子の第一励起固有値と同定した。この固有値問題は温度θがプランク定数に対応するシュレーディンガー演算子(SO)の固有値問題に変換できる。一方、タンパク質結晶化のような遅い緩和では低温条件が満たされWKB法が使える。SOに現れる有効ポテンシャルも3連井戸型であり、コヒーレンスが効く領域で基底、第1,2励起固有値はほぼ3重縮退していて、トンネル効果で3重縮退が解けている。そこで3重縮退の場合のエネルギー準位分裂をWKB法で解析的に求め、緩和定数は2つのバリアー高さの算術平均を有効バリアー高さにもち、中央と左の井戸の曲率の幾何平均を有効曲率に持つ、拡張クラマース公式に従うことを示した。3重縮退していない領域ではNicolisらの結果と整合した。 (2)非平衡緩和へのWKB解析の拡張として、傾いた周期ポテンシャル中の相互作用しないブラウン粒子群の熱拡散について周期的配列を課した場合の緩和定数を調べた。傾きのため、FP演算子、対応するSOは非エルミート的で複素固有値をもつ。特にcosine型周期ポテンシャルの場合、傾きが小さくバリアーが存在する場合、実固有値を仮定したWKB法が、傾きが大きくてバリアーが存在しなくなる場合、複素固有値を仮定したWKB法が数値的固有値をよく再現した。
|
Research Products
(2 results)