2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05J00639
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
山田 晋之介 静岡大学, 理学部, 特別研究員
|
Keywords | 貝形虫 / 節足動物 / 甲殻類 / 背甲 / 蝶番構造 / TEM / 形態形成 / 進化 |
Research Abstract |
現生貝形虫類8上科23科35属45種について,TEM観察を主体として背甲の超微細構造を網羅的に記載し,その形態形成のメカニズムについて理解を深めた.種多様性の高いPodocopida内ではクチクラ構造の多様化が顕著で,科・属内において高い構造的多様性を持つことが示唆された.これに対して,表皮細胞の構造は目レベルにおいて非常に安定していた.また,貝形虫は2つの表皮細胞層(外側と内側)を持つが,両者はオルガネラの構成に明瞭な違いが見られた.これは機能的分化を示す証拠であり,貝形虫の背甲が外側表皮細胞による石灰化機構の発達と,内側表皮細胞による呼吸の効率化や浸透圧調整機構を,同時に達成したことを説明するものである. さらに,貝形虫の背甲縁辺部,特に蝶番部に着目して網羅的な超微細構造の記載を行い,且つその発生に伴う形成過程を追跡した.蝶番部はこれまで独立した特殊な構造であると認識される傾向にあったが、本研究から,蝶番部の形態も背甲クチクラ層の変形として理解可能とした. 蝶番部の網羅的な構造記載は,蝶番構造の分類に用いる新しい概念をも確立した.この新しい概念を適用することで,これまで単純な形態ゆえに複数の系統を跨いで多くの分類群で認識されていた"adont"型の蝶番は,構造的に多様化していることが明らかになった.同時に,派生的分類群であるCytheroideaのhingementの多様化は,ligamentとhingementの発達領域を独立させ,その構造的可塑性を発揮した結果であることを説明した.さらに化石記録との照合から,貝形虫類の蝶番構造の進化経路を提示した. また,本研究では蝶番の発生学的な観察を行った.左右のhingementは同時に形成されるのではなく,片方のhingementが先行して形成され,後に形成されるものに対して鋳型の様な役割を果たすということを証明した.この成果によって,これまで高次分類に重宝されつつも全く解明されていなかった蝶番構造の形成過程を解明し,その形態形成モデルを初めて提案した.
|
Research Products
(2 results)