2007 Fiscal Year Annual Research Report
クロマチン構造変換を介した心筋変性発症機序の解明 〜心臓のエピジェネティクス〜
Project/Area Number |
05J00700
|
Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
朝野 仁裕 National Cardiovascular Center Research Institute, 循環動態機能部, 特別研究員PD
|
Keywords | 心臓 / 心不全 / 心筋症 / エピジェネティクス / ヘテロクロマチン |
Research Abstract |
慢性心不全の分子病態機序解明は循環器疾患における最重要課題の一つである。過去2年間の研究において示してきた心不全・心筋症においてエピジェネティクスがかかわる重要性をさらに深めるため、循環器疾患の中で最も一般的かつ重症度の高い疾患である重症慢性心不全の病態形成に関わるメカニズムを解明することを目標として研究を行った。 心不全の胎児性遺伝子発現の再活性化が生じる理由およびその慢性期維持制御に果たす役割は未解明であり、「遺伝子発現の急性期応答と慢性期応答の発現制御機構は異なる」という仮説の下に,慢性心不全における細胞核クロマチンリモデリングが担う発現制御メカニズムの意義を検討した。 マウス心筋細胞の転写活性化を核クロマチン構造の形態学的、及びGeneChip法により解析した。慢性心不全において転写活性の増大が示唆された。更に心不全動物モデル及びヒト心筋生検組織からの組織サンプルでは、病態下の細胞核ヘテロクロマチン構造の形態変化を認めた。次に心臓組織への再現性の良いクロマチン免疫沈降法(In Vivo ChIP法)を独自に開発し、マウス慢性心不全モデルを用いて病態形成に伴うエピジェネティック修飾変化を検討した。急性期・慢性期応答の間で胎児性遺伝子領域のヒストン翻訳後修飾変化を認めた。さらにこれらのクロマチン変化がヒト慢性心不全においても認められるか核内構造変化について、組織学的検討を行い、胎児性遺伝子発現、転写因子発現の動態とともに比較検討を行った。 今回、難治性心不全の進展を惹起する遺伝子発現維持機構を考える上で、"細胞核内メモリー"という新しい病態概念を当てはめて検討したところ、慢性期病態モデルの分子メカニズムにエピジェネティックな遺伝子発現制御機構が果たす役割が大きいことが示唆された。(現在論文投稿中である。) 本研究結果はその有用性が認められ第72回日本循環器病学会Young Investigator Awardに選出された。
|
Research Products
(1 results)