2006 Fiscal Year Annual Research Report
中世の真言文化圏にみる密教思想の影響と文学活動の解明
Project/Area Number |
05J00759
|
Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
高橋 秀城 大正大学, 人間学部, 特別研究員(PD) (20459259)
|
Keywords | 談義 / 幼童稽古 / 印融 / 目録 / 修学 / 講式 / 頼瑜 / 『真俗雑記問答鈔』 |
Research Abstract |
真言文化圏における文学活動を解明する一視覚として、東京大学史料編纂所蔵『連々令稽古双紙以下之事』(以下、本史料)を考察した(「佛教文学」第31号/2007.3、及び「智山学報」第56輯/2007.3)。本史料は十六世紀初頭〔永正十一年(1514)頃〕に生きた真言僧某(作者未詳)が著したものであり、そこには真言僧侶が十五歳春までに学ぶべき典籍や、出家以後に修法した護摩の名称や座数、内々に勤行すべき講式名や作者などが目録風に列挙されている。論文では、本史料が室町末期の真言僧の素養が窺い知れる史料であるとともに、特に出家以前の童子という時期においての修学過程がかいま見られる史料として貴重なものであることを指摘した。さらには、編者が「三宝院流」と「西院流」をともに受法していた室町後期の学匠印融(1435〜1519)によるものである可能性についても言及した。本史料には数多くの文学書が記載されており、個々の作品研究において極めて有効な情報源となることから、文学研究に資するところは大である。多方面にわたって興味深い内容を示しており、今後は他の聖教目録との比較を行うなどして、さらに僧侶の基礎教養を探っていく予定である。 また、頼瑜(1226〜1304)の著作に関する研究として、本年度は六地蔵寺所蔵『真俗雑記』の翻刻を行った(「大正大学綜合佛教研究所年報」29号12007.3)。『真俗雑記問答鈔』には、頼瑜も含めた諸僧の和歌や漢詩、歌会次第の作法、自身の夢想の記事など、文学に関わる記述が多く見られる。これまで十数本の写本を確認したが、六地蔵寺蔵『真俗雑記』は第十三巻の一冊のみしか伝存していないものの、永正十六年(1519・恵深写)という伝本中最も古い奥書を有している。今後は醍醐寺所蔵本との関わりから六地蔵寺本『真俗雑記』の伝来の経緯についても考察していく予定である。
|
Research Products
(3 results)