2005 Fiscal Year Annual Research Report
分子生物学的手法によるイネフィトクロムAのシグナル伝達機構の解析
Project/Area Number |
05J00785
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
岡 義人 独立行政法人農業生物資源研究所, 特別研究員
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Keywords | イネ / フィトクロム / 光シグナル伝達 / ジャスモン酸 |
Research Abstract |
受入研究室では、イネのフィトクロム欠損変異体を用いたマイクロアレイより、光により一過的に発現が誘導される遺伝子を約50個単離している。これらの中で、FR29遺伝子は光照射後非常に早く発現が誘導されることから、フィトクロムによる遺伝子発現ネットワークの中でも比較的上流で機能する可能性が示唆された。 機能未知であるFR29遺伝子はイネにおいてホモログが16個存在しており、その内の3つは光により一過的に発現が誘導される。また、発現量や光照射後の発現時期に差はあるが、残りの13個もほとんどが光によって発現が誘導される。これらのことからFR29遺伝子ファミリーがフィトクロムによる光形態形成に深く関わることが考えられた。まず、FR29過剰発現体を暗所、もしくは連続遠赤色光条件下で育て、幼葉鞘の長さを調べたところ、野生株に比べるとFR29過剰発現体は遠赤色光条件下において幼葉鞘が徒長した。また、暗所において、FR29過剰発現体はhebiba変異体に類似した表現型を示し、葉鞘が異常に徒長した。hebiba変異体は植物ホルモンの一種、ジャスモン酸の生合成に異常があることが知られているので、FR29過剰発現体もジャスモン酸に関わる異常があると考えられた。そこで、FR29過剰発現体を様々な濃度のジャスモン酸存在下で培養し、その表現型を観察した。その結果、FR29過剰発現体の表現型はかなり高濃度のジャスモン酸を加えても相補されなかったので、FR29過剰発現体ではジャスモン酸量が低下しているというよりむしろ、ジャスモン酸感受性が低下していると考えられた。 イネのフィトクロム情報伝達系においては、シロイヌナズナのそれとは異なり、ジャスモン酸の役割が非常に重要であると考えられている。今後、FR29遺伝子の解析を通して、イネフィトクロム情報伝達機構とジャスモン酸情報伝達機構の関係を明らかにしたい。
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