2006 Fiscal Year Annual Research Report
放射線誘起ルミネッセンスの機構解明と線量測定等への応用
Project/Area Number |
05J00902
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
八幡 崇 新潟大学, 大学院自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 放射線誘起ルミネッセンス / 天然石英 / 赤色熱ルミネッセンス / 年代測定 / パルス時間間隔解析法 / 液体シンチレーション / 年間線量率 |
Research Abstract |
石英などの絶縁性無機物質は電離放射線との相互作用の結果、結晶中の不純物部位に電子を準安定の状態で捕捉する。この捕捉電子は加熱により再び解放され、正孔と再結合することで脱励起に伴う発光である熱ルミネッセンス(TL)を引き起こす。この捕捉電子数は、最後に加熱を受けて以後の放射線線量に比例することからルミネッセンス発光量から焼成考古遺物等の蓄積放射線線量を評価することが可能となる。さらに石英粒子が1年間当りに被爆する放射線線量(年間線量率)を見積もることで、最後に加熱を受けてからの経過年代を評価することができる。 北海道洞爺火山灰層から抽出した石英粒子からは赤色TL(RTL)が観測でき、このRTLに関与する捕捉電子の活性化エネルギーを測定し、捕捉電子の平均寿命を計算した。その結果、捕捉電子は数十万年に亘り安定に存在できることを理論的に確認でき、RTL発光が第四紀の年代測定に有効であることが確認された。 さらに土壌、石英中に含まれる極微量の放射性核種である^<214>Poと^<216>Poを液体シンチレーションカウンタからの出力パルスに対してパルス時間間隔解析法を適用することで初めて弁別定量が行え、かつ放射平衡を仮定することでU, Thも定量できた。この結果を基に年間線量率を評価した結果、石英内部の放射性核種濃度が年間線量率に寄与する割合が大きい試料が存在することを明らかにできた。この石英内部の放射性核種濃度を考慮した年間線量率と蓄積放射線線量から見積もられたRTL年代値は、他の年代測定法による年代値と調和的であった。 これらの結果をまとめた論文は国内の学術誌2報に印刷中であり、外国学術誌にも投稿中である。なお成果の一部は、イギリス(リバプール)で開催のルミネッセンス年代測定関連の国際会議(2006年9月)、中国(香港)で開催されたアジアルミネッセンス年代測定の国際会議(2006年10月)で発表した。
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Research Products
(6 results)