2006 Fiscal Year Annual Research Report
エチニルピリジンを基本単位とする水素結合性糖認識ポリマーの開発
Project/Area Number |
05J00934
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
脇 稔 富山大学, 大学院薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 高分子構造・物性 / 分子認識 / 糖 / 有機化学 / らせん |
Research Abstract |
ピリジン環に親水性基を導入したポリマーは、極性溶媒中で疎溶媒効果により自発的にらせん構造を形成することが、各種スペクトル測定から明らかとなった。このポリマーは、らせんの空孔を利用することにより、100%プロトン性溶媒中であっても天然の糖を認識することがわかった。また、この糖認識の駆動力は主に水素結合であることが強く示唆された。 このポリマーと糖の相互作用は、糖の変旋光によって影響を受けることが予想される。ゲスト分子としてグルコースを用いた場合、その変旋光の影響により非常に興味深い現象が観測された。メダノール/水(5:1)において、グルコースのα-アノマーとβ-アノマーをそれぞれポリマーに作用させると、それぞれのスペクトルは互いに反対符号の誘起CDを示した。さらに、スペクトルの時間変化を追跡したところ、時間の経過とともにそのCD強度の減少が観察された。48時間後、それぞれのスペクトルはほぼ同じ形状となり平衡に達した。すなわち、相互作用するグルコースに変旋光が起こり、α体とβ体の存在比率が変化するため、それに応じてポリマーのらせん構造が反転することがわかった。 ^<13>C NMRを用いてグルコースのα/βの存在比率の時間変化を追跡した。^<13>CNMRから見積もられたβアノマーの比率とCDスペクトルの強度を時間に対してプロットしたところ、これらはほぼ同じ曲線をたどることがわかった。相互作用する糖の変旋光に連動して、CDスペクトルの強度が変化していることが明らかとなった。この現象の一般性を調べるため、グルコース以外の糖についても同様の実験を行ったところ、マンノースとアロースにおいても、変旋光によりCDスペクトルの強度が変化することが判明した。これらの事実は糖の変旋光がポリマーの高次構造の変化に写し取られたことを意味し、非常に興味深い知見である。
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Research Products
(2 results)