2005 Fiscal Year Annual Research Report
エチニルピリジンを基本単位とする水素結合性糖認識ポリマーの開発
Project/Area Number |
05J00934
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
脇 稔 富山大学, 大学院・薬学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 高分子構造・物性 / 分子認識 / 糖 / 有機化学 / らせん |
Research Abstract |
これまでに申請者は有機溶媒中で糖を認識するエチニルピリジンポリマーの開発に成功している。ここで用いられている合成戦略を利用し、水溶性エチニルビリジンポリマーの合成に着手した。まず、エチニルピリジンポリマーに水溶性を付与するためにピリジン環の4位に親水性基の導入を検討した。親水性基として、長鎖オキシエチレン鎖を用いることで極性溶媒中への溶解能を向上させた。ポリマー化への誘導については、パラジウム触媒を用いたソノガシラカップリング反応により効率的にポリマーを合成することに成功した。このポリマーはサイズ排除クロマトグラフィー法により容易に精製することができ、また、その保持時間から平均分子量を算出することができた。 次に、ポリマーの溶液中での物性、構造についての情報を得るために紫外可視吸収、蛍光発光、^1H NMRスペクトルの測定を行った。すると、ポリマーはメタノール/水中においてはピリジン環がスタッキングした高次構造をとることが示唆された。ポリマーのピリジン環に疎溶媒効果が働くために、極性溶媒中でのポリマーの構造はピリジン環を内側に親水性基を外側にしたらせん構造をとることがわかった。 極性溶媒中での糖認識能について調べるために円二色性分(CD)光法を用いて解析した。円二色性分光法はキラルな高次構造を検出する手法として最も適している。メタノール/水中において糖質を作用させるとポリマーの紫外可視吸収領域に誘起CDが観測された。これは糖のキラリティがポリマーの高次構造のキラリティとして反映された結果であると言える。さらに、溶媒の検討、会合に関する熱力学的パラメータの解析を行った結果、このポリマーと糖との会合は水素結合に大きな寄与があると示唆された。プロトン性溶媒中での水素結合を主な駆動力とした糖質の認識はこれまでに例が少なく、先駆的な結果であると言える。
|